航空業界がパイロットの酒気帯び乗務を巡る問題で大きく揺れている。日本航空(JAL)では2018年10月28日、ロンドン発羽田行き便の副操縦士が酒気帯びの状態で乗務に就こうとした疑いで現地の警察に逮捕された。
結論は2018年11月29日に予定される現地の司法当局による判決を待つ必要があるが、アルコール検知器による検査をすり抜けたほか、マウスウオッシュでアルコール臭をごまかそうとした可能性も指摘される。酒気帯びの自覚がありながらそのまま乗務しようとした悪質な案件の可能性がある。
JALだけではない。全日本空輸(ANA)でも子会社の機長が2018年10月25日、前夜の大量飲酒による体調不良で乗務できなくなり5便を遅延させた。スカイマークでも同年11月14日の羽田発新千歳行きにおいて、乗務前の検査で機長から規定値を超えるアルコールが検出され遅延を起こした。
緊急の対策は打ち出したが…
これらの事案について航空各社は、それぞれ謝罪するとともに再発防止策を発表している。再発防止策の柱となるのは最新型のアルコール検知器の導入だ。
アルコール検知器は大きく分けて新旧2種類がある。旧型はアルコールを検知するセンサーが本体上部に露出しており、そこに息を吹きかける方式だ。酒気帯びであっても息を吹きかける角度や量によっては検知しない可能性が指摘されている。
さらに旧型のUI(ユーザーインターフェース)は、電源と検知を兼ねたパイロットランプが1個付いているのみ。「検知」を示す赤色の点灯はともかく、緑色の点灯は「測定準備完了」と「異常なし」の2つの意味を兼ね、本当に異常がなかったのかどうか分かりにくい。
これに対し新型はセンサーが本体内部にあり、本体から伸びたストローで息を本体内へ吹き込む必要がある。検査結果も数値で表示されるため、旧型に比べると息の吹きかけ方をごまかすといった不正はしづらい。
新型のアルコール検知器は、JALは国内全空港、ANAは羽田空港に配置済みだが、これを2社とも国内外の全空港へ配置する。併せて各社とも、アルコール検知器による検査時の第三者立ち会いの強化、乗務前の飲酒に関する規定の厳格化、パイロット以外の運航に関わる全従業員へのアルコール検査導入といった措置を発表している。
検査技術の進歩と回避はいたちごっこ
実際にトラブルが発生したことを踏まえた緊急対策ということを考えれば、これらの施策により一定の効果は期待できるだろう。だが記者としては、JALとANAの2社にさらに踏み込んでほしい。より確実な酒気帯び乗務防止機能の実用化に向けた研究開発に取り組んでほしいと考えている。