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 牧野フライス製作所が、レーザー加工機事業に参入した。2020年11月9日のオンライン記者発表で同社取締役社長の井上真一氏は、「当社83年の歴史において大変重要な日。これまでミリング(フライス加工)を中心にやってきたが、新事業としてレーザー加工機事業に参入する」と新規参入の意欲を語った。

牧野フライス製作所が発売した「LUMINIZER LB300」
牧野フライス製作所が発売した「LUMINIZER LB300」
(出所:牧野フライス製作所)
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純水の水の中を進むレーザー

 発売するレーザー加工機は、「LUMINIZER(ルミナイザー) LB300」「同 LB500」。ユニークなのはレーザーの照射方法。純水の細い水流でワークに導いたレーザー光で加工する。

 具体的には、純水のジェットを噴き出す水チャンバーのノズル部近傍に、集光レンズで焦点を合わせたレーザーを照射する。すると、光ファイバーと同様の原理で、レーザーが水と空気の境界面で全反射しながらジェット水流内を進んでいく。ジェット水流の径は2~5μmで、同水流の長さは最大1m程度になるという。スイスSynova(シノバ)社の「Laser MicroJet(LMJ:レーザーマイクロジェット)」技術を採用した。

レーザー照射の原理
レーザー照射の原理
水と空気の境界面で全反射しながら細いジェット水流の中をレーザー光が進む(出所:牧野フライス製作所)
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 通常のレーザー加工機と異なり焦点位置の調整が不要なため加工面に凹凸があっても加工ヘッドを上下動させる必要がない。加えて加工断面が垂直になる、ワークが水で冷却されるため熱影響を受けにくい、加工くずがジェット水流によって排出され裏面にバリが出にくい、といった利点がある。

通常のレーザー加工との違い
通常のレーザー加工との違い
(出所:牧野フライス製作所)
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 難加工材とされる炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)、ジルコニア、アルミナ(酸化アルミニウム)、ダイヤモンド焼結体などの脆性(ぜいせい)材の加工や微細加工に向くとしている。例えばSiCの歯車の加工例では、研削では1200分を要する加工が、LB300なら100分ほどで済んだという。また、プラスチックと炭素繊維の溶融温度の違いから通常のレーザー加工機では加工が難しい炭素繊維強化プラスチックの切り出しなどもできるという。さらに、今後はジェット水流をさらに細くし、さらなる微細加工を追求するとしている。

SiCの加工例
SiCの加工例
(出所:牧野フライス製作所)
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 レーザー発振器には、米Industrial Laser Machines(インダストリアルレーザーマシン)の「ILM-200MQG-DUAL」を採用している。レーザーの波長は532nmでピーク出力は、160kWである。最大ワークサイズは、LB300が幅400×奥行き300×高さ200mm、LB500が幅500×奥行き500×高さ500mm。いずれも標準仕様は3軸加工だが、LB500はロータリーテーブルを付加した特別仕様の5軸タイプも用意する。