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 取材の待ち合わせは、恵比寿にあるトイレの前に朝10時──。何とも不思議な場所でのインタビューが、2020年11月中旬に実現した。

 トイレでお会いしたのは、日本財団常務理事の笹川順平氏。彼は日本財団で、誰でも快適に利用できる公共トイレを設置するプロジェクト「THE TOKYO TOILET(ザ トウキョウ トイレット)」を先導している。20年から21年にかけて、東京都渋谷区に合計17の新しい公共トイレを設置していく。

日本財団の笹川順平常務理事。「THE TOKYO TOILET」の旗振り役だ(写真:北山 宏一)
日本財団の笹川順平常務理事。「THE TOKYO TOILET」の旗振り役だ(写真:北山 宏一)
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 このプロジェクトは、豪華な顔ぶれが公共トイレのデザインを手掛けることで話題になっている。安藤忠雄氏や伊東豊雄氏、隈研吾氏、槇文彦氏ら、16人の建築家やデザイナーが参画。公共トイレのデザイン合戦に注目が集まっており、20年中に供用を開始した7カ所のトイレをスタンプラリーのように巡る人が続々と現れている。

 日本を代表する建築家やデザイナーが関わった施設をただで見られて、ついでに用も足せる。供用開始の第1弾となった坂茂氏による「はるのおがわコミュニティパークトイレ」と「代々木深町小公園トイレ」は、中が透けて見えるという驚きで大きな話題になった。ソーシャルメディアに投稿された「透け透けトイレ」の写真は、「日本だけでなく海外でも拡散して盛り上がっているようだ」(笹川氏)。

 仕掛け人の笹川氏はあの手この手でつてをたどり、著名な建築家やデザイナー、アートディレクターなどにトイレプロジェクトへの参加を訴えていった。話を聞いた建築家らは皆、「非常に面白い」と乗り気で承諾してくれたという。

 筆者は笹川氏に改めて、THE TOKYO TOILETの話を聞くため、取材を申し込んだ。オフィスでのインタビューも考えたが、せっかくならと、既に完成しているトイレでの取材に協力してもらった。

 インタビューする場所に選んだのは、槇氏がデザインした「恵比寿東公園トイレ」である。20年8月7日に供用が始まった。

 庇(ひさし)になる屋根があり、ベンチもあるのを知っていたので、大雨でも降らない限り、屋外で取材できると考えたからだ。コロナ禍では密にもなりにくく、都合がいい。

 もっとも、公園で撮影をする場合、渋谷区に許可を取らなければならない。筆者はコロナ禍に渋谷区役所へ二度通って、撮影の許可書を取り付けた。正直面倒だったが、このロケーションでインタビューができたことに満足している。取材当日は天候にも恵まれた。秋晴れの下、トイレに「腰を据えて」、笹川氏にじっくりと話を聞くことができた。

公園の中にある公共トイレのベンチに座って、インタビューする筆者(左)。ベンチは汚くも臭くもない。撮影中だけ、笹川氏にはマスクを外してもらった(写真:北山 宏一)
公園の中にある公共トイレのベンチに座って、インタビューする筆者(左)。ベンチは汚くも臭くもない。撮影中だけ、笹川氏にはマスクを外してもらった(写真:北山 宏一)
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 槇氏がデザインした恵比寿東公園トイレは、まるで家のようなたたずまいをしている。分散配置した複数のトイレに、非常に薄い屋根を架けた。

 建物の色は、汚れが一番目立つはずの白で統一。トイレをつなぐ中庭があり、木が植えられ、腰かけられるベンチまである。およそ公共トイレとは思えないつくりになっている。

槇文彦氏による「恵比寿東公園トイレ」。休憩もできる公園内のパビリオンを目指した(写真:日本財団)
槇文彦氏による「恵比寿東公園トイレ」。休憩もできる公園内のパビリオンを目指した(写真:日本財団)
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 槇氏は「休憩もできる公園内のパビリオン」を目指して、公共トイレをデザインしたという。薄くて複雑な形状をした屋根は、造船で使われる手法で製作したと言い、壁が雨垂れで黒ずまないように、といの配置も工夫している。とにかく手が込んでいる。

 そして何より、洒落(しゃれ)が利いている。槇氏は「タコの遊具によって『タコ公園』と呼ばれる恵比寿東公園に、新しく生まれた『イカのトイレ』として親しまれることを望む」とコメントを寄せている。建物の色を白にしたのは、そのためだ。

赤いタコの遊具とは対照的な、白い外観の公共トイレ。デザインした槇氏は、通称「タコ公園」に出現した「イカのトイレ」として親しまれることを望んでいる(写真:日本財団)
赤いタコの遊具とは対照的な、白い外観の公共トイレ。デザインした槇氏は、通称「タコ公園」に出現した「イカのトイレ」として親しまれることを望んでいる(写真:日本財団)
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 笹川氏は、21年に完成する伊東氏や隈氏、藤本壮介氏などのトイレも、「非常にユーモアがあって、面白いものばかり。期待してほしい」と筆者に語った。