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 「祖父の残した旧車に乗ってみないか」。突然、叔父が放った一言ですべては始まった。運転の楽しい車を探していた筆者は「面白そう」と思い、その旧車を譲り受けることにした。それから始まった旧車との生活。それは、最近の車に乗り慣れている筆者には驚きの連続だった。

筆者が譲り受けた日産「ダットサン1000セダン」
筆者が譲り受けた日産「ダットサン1000セダン」
(写真:日経クロステック)
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1958年製、日産「ダットサン1000セダン」

 やってきたのは、1958年製の日産自動車「ダットサン1000セダン(210型)」だ。日産は、その前身であった「戸畑鋳物自動車部」から小型車「ダットサン」の製造事業を引き継いで、1933年に独立した。日産の生産第1号車は「ダットサン12型」。筆者が引き継いだ210型のダットサンは、1958年に同社の乗用車として初めて対米輸出した車だ。ダットサンは同社の歴史を語る上で重要な車である。

車体が軽自動車並みに小さい

現代のセダンと比べると全長・全幅が短く、全高が高いのが特徴だ
現代のセダンと比べると全長・全幅が短く、全高が高いのが特徴だ
(写真:日経クロステック)
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 改めて実車を見て驚いたのは、全長3860mm、全幅1466mm、全高1535mmと、車体が小さいことだ。最新のセダン車、トヨタ自動車「カローラ」は、全長4495mm、全幅1745mm、全高1435mmである。特に車幅が現代の車に比べて小さく、軽自動車の全幅の規格サイズ1480mmよりも短い。

ダットサン1000セダン(左)の全幅が1466mm、対してホンダ「シビックタイプRユーロ」(右)の全幅は1785mm
ダットサン1000セダン(左)の全幅が1466mm、対してホンダ「シビックタイプRユーロ」(右)の全幅は1785mm
全幅は現在の軽自動車の規格サイズより短い。(写真:日経クロステック)
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全幅が短いため、前席に成人男性2人が座ると少々窮屈だ
全幅が短いため、前席に成人男性2人が座ると少々窮屈だ
(写真:日経クロステック)
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 外装面での特徴は、リアの方向指示器を個別に装備していないことだ。1つのライトをブレーキランプと併用しているため、方向指示器を出すと赤くブレーキランプが点滅する。

 現在、方向指示器は橙色(だいだいいろ)であることが義務化されている。ただ、道路運送車両の保安基準は、1960年(昭和35年)3月31日以前に生産された自動車に限って「方向の指示を後方又は後側方に表示するためのものについては赤色とすることができる」と表記している。

 譲り受けたダットサンは1958年(昭和33年)製のため、条件を満たしており、違反には当たらない。しかし、周囲の運転者が「ブレーキランプの点滅」を方向指示器だと気づいていない場合があるため、車線変更時や交差点を曲がる際などは細心の注意を払う必要がある。

左の方向指示器を出した際は、左のブレーキランプが点滅する
左の方向指示器を出した際は、左のブレーキランプが点滅する
(写真:日経クロステック)
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シートベルトが無い

運転席をはじめ全ての座席にシートベルトを装備していない
運転席をはじめ全ての座席にシートベルトを装備していない
ヘッドレストもない。(写真:日経クロステック)
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 車内の大きな特徴は、シートベルトが無いこと。日本で製造した車に運転席のシートベルトの設置を義務付けたのは、1969年(昭和44年)のことだ。1969年以前に製造され、シートベルトを設置していない自動車は、現在も違反になることはない。

 もちろんエアバッグも装備していない。現代の車は、シートベルト、エアバッグ、自動緊急ブレーキなどを装備し、多方面で安全性を向上させ、乗員を守っていることに改めて気づかされる。