全1284文字
PR

 副業への注目度がかつてなく高まっている。政府が2019年6月に閣議決定した成長戦略実行計画には「兼業・副業の拡大」が盛り込まれた。政府は副業経験を通じたスキルアップや副業を活用した起業の増加などを狙う。

 しかし、そんなバラ色の未来は訪れるのだろうか。副業にはあまり語られない不都合な真実がある。「現状、IT分野で副業者を活用したい企業の多くは、上位数%のハイスキル人材を期待している」(エン・ジャパンの岡田康豊デジタルプロダクト開発本部エン転職編集長)という点だ。この構造を変えられないと、政府が笛吹けど踊らずという状況になりかねない。

 総務省の「平成29年度就業構造基本調査」によると、副業をしている割合を本業の所得別に見ると年収300万円未満と年収1000万円以上の層で高い。前者はパートやアルバイトの掛け持ちで収入を少しでも増やしたい層と考えられる。フルタイムで働くIT人材は年収300万円以上がほとんどだろう。IT人材の副業需要は「基本的に副業が見つかる機会はまれで、年収1000万円を超えるくらいになると副業機会が増える」といえる。

本業の所得別に見た副業をしている人の割合
本業の所得別に見た副業をしている人の割合
(総務省「平成29年度就業構造基本調査」を基に作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 実際、副業の仲介を手掛ける企業に取材をしていると「ハイスキル人材以外にマッチングできる仕事はあまりない」というニュアンスのことをよく聞く。ベンチャー企業のCTO(最高技術責任者)、成功したスマホアプリのプロダクトマネジャー、オープンソースソフトのコミュニティーで名が知られたエンジニア――。副業で活躍しているのは、そんな人たちであることが多い。

 正直、記者としてはこの状況はあまりわくわくしない。IT人材の数%にしか役に立たない記事を書き続けるのはちょっとつらいからだ。それに、これでは十分にスキルアップしたIT人材の活用にとどまる。副業を通じたスキルアップとは言い難く、副業解禁がIT人材やIT業界の底上げにはつながらない。不都合な真実を認識して、乗り越える方法を考える必要がある。

地方企業とのマッチングが鍵になるか

 最近になって状況を変化させるかもしれない動きが出てきた。首都圏で働くIT人材と地方の中堅・中小企業とのマッチングだ。地方銀行や人材会社がIT人材と地方企業をつなげるビジネスを本格化させようと動き始めている。一部報道によると、政府もマッチングを成立させた仲介会社に支援金を出す方針を示しているという。

 地方の中小企業の多くはIT化そのものが遅れ気味だ。既存システムの保守や改修、クラウドサービスの活用、ExcelやAccessといったオフィスソフトの活用に課題を抱えている。とがったスキルがなくとも、IT人材の一般的なスキルを生かしやすい。どちらかというと、経験豊富なシニアSEに向いた仕事だ。

 まだ始まったばかりで「地方企業が副業という選択肢の存在をそもそも知らない」(IT人材と地方企業のマッチングサービスを手掛けるJOINSの猪尾愛隆社長)という課題もある。ただ、うまく立ち上がると面白い。地方創生とシニアSEのセカンドキャリア、この2つの課題を一気に解決する可能性もある。今後に期待したい動きだ。