地域金融機関のシステムコスト削減に向け、勘定系システムの運用共同化が始まった。バンキングアプリや営業店システムも共通化が進む。DX(デジタル変革)推進を目的に始まった領域は、もはや共通化してスピード感を持って取り組む「当たり前」の事業になっている。そこで突きつけられるのが、本来のDXとして進めるべきものは何だろうかという疑問だ。
2021年12月初頭までに、地方銀行向けの基幹系共同センターの2陣営、「MEJAR」と「NTTデータ地銀共同センター」がシステム運用の効率化などを検討する「地銀共同センター・MEJARシステム・ワーキンググループ(CMS-WG)」の第1回が開催される。
CWS-WGの発足が発表されたとき、ついに始まったかといった感じだった。横浜銀行を中心とするMEJARは、他陣営との運用共同化を模索していた。MEJARはシステム刷新でクラウド化を計画しており、それに合わせてシステムの統合もあり得るかと思われた。
実際は「システムの自体の統合は想定していない」という。業務ロジックの部分はそれぞれカスタマイズしてきた歴史があり統合は難しく、コスト削減にも大きく寄与するわけではないからだ。CMS-WGでは、各陣営で管理・監視や保守など運用部隊を構えている現状に対し、共同化によってリソースや人員などが削減できるかを検討する。
運用の共同化にとどまったとしても、CMS-WGの検討結果は地域金融機関全体にとって大きな意味を持つかもしれない。
両陣営が共同化に動いた理由の1つは、同じ勘定系パッケージ「BeSTA」を利用していること。BeSTAを利用する地域金融機関は多い。地銀向けの基幹系共同センターの「BeSTAcloud」は地銀10行、「STELLA CUBE」も地銀10行、さらに13の労働金庫がBeSTAを利用中だ。日立製作所の地域金融機関向けアウトソーシングサービス「NEXTBASE」でもBeSTAを用いており、11行が参加する(執筆時点)。
「新たな事業に向けたIT投資の増大」「既存システムのコスト削減への圧力」といった課題は地域金融機関全体で共通するもの。CWS-WGで共同化できれば、こうした課題の取り組み範囲が広がる可能性がある。
例えば、勘定系システムのコスト削減に向け、システム自体のアーキテクチャー刷新が進んでいる。MEJARでは、Linuxをベースとしたオープン勘定系システムへの刷新を予定しており、クラウドの利用も検討中だ。金融機関の勘定系システムは、もはや機能強化よりも、コスト削減に向けた変化しかない。パッケージのオープン化や保守を容易にするマイクロサービス化、クラウドへの搭載とシステムや運用保守の共同化といった方向で収束していくだろう。