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 「第62回電池討論会」が2021年11月30日~12月2日に開催された。年に1回の「電池分野における世界最大級の学会」(NEDO)で、記者は取材のため会場のパシフィコ横浜を訪れた。記者は入社2年目であるため、リアルで開催される電池討論会への参加は初めてである。

 電池討論会は電池開発の最先端を知ることができる場だ。講演自体の学術的な価値はもちろんのこと、各講演の聴講者の人数は、電池関係者の注目度を推し量るバロメーターとなる。今回、会場には8つの講演ルームがあり、テーマごとに8講演が同時進行していた。ある部屋ではリチウム(Li)イオン電池(LIB)の正極に関する講演が続き、別の部屋では空気電池に関する講演が続く、といった具合だ。聴講者は各部屋を自由に出入りすることが可能なため、高い関心が寄せられているテーマほど、多くの聴講者を集めた。

 そこで、記者が現場で見た各テーマの盛況ぶりと、講演本数のテーマ別の内訳をリポートしていく。

 まず、おそらく最も多くの聴講者を集めたのがLIBに関する研究だった。中でも記者が強く興味を持ったのは、LIBの「安全性」にフォーカスした部屋が用意されており、活発な討論が行われていた点である。LIBメーカーが安全性を追求するのは当然だが、大学関係者の講演も多くあった。

 言うまでもなくLIBの安全性に関する研究は極めて重要である。LIBに起因する電気自動車(EV)や蓄電池システムの発火事故が相次いでおり、今後の普及拡大に向けて課題となっているためだ。ただ、安全性というとどうしても新規電極や次世代電池といった研究に比べ、インパクトに欠ける。そのため記者は、もっと細々と研究されている分野かと勝手に思い込んでいた。ところが実際には、産業界のみならず、大学の基礎研究レベルの報告も多数あり、盛んに議論されていたのだった。

 LIB以外の次世代電池では、記者が見た限りナトリウム(Na)イオン電池(NIB)が多くの聴講者を集めていた。NIBの実用化に向けた期待の高まりが電池関係者の間にあるものと思われる。フッ化物(F)イオン電池も、NIBほどではないが盛況だった。

 一方、空気電池は意外と聴講者が少なかった。望みをあまり持たれていなかったり、学術的な注目度がそれほど高くなかったりするのかもしれない。