全2113文字
PR

 長年日本に住んでいる筆者にとって大きな悩みが一つある。それはビザの更新だ。1年おきに更新があり、そのために多くの労力を割かなければならない。

 必要な書類を東京都港区にある東京出入国在留管理局に行って提出する。その際に数百人の申請者と一緒に、4時間以上待つのが常だ。フロアには人があふれ、通路にまで行列が伸び、疲れて座り込む人もいる。恐ろしいことにその現状は筆者が最初に管理局へ赴いた15年前と変わっていない。

ビザの更新にはいつも長蛇の列。非効率な手続きが原因にある
ビザの更新にはいつも長蛇の列。非効率な手続きが原因にある
(出所:123RF)
[画像のクリックで拡大表示]

 外国人が日本で就労するための制度「特定技能」が脚光を浴びているのをご存じだろうか。特定技能とは外国人に対し、日本で就労を認める在留資格だ。既存の技能実習制度の上位の資格として、人手不足が深刻な介護や外食などの業種14分野での就労を認めるものだ(「特定技能1号」)。

 今、特定技能が注目されているのは、政府が2022年をめどに、長期就労や家族帯同を認める「特定技能2号」の業種拡大を検討しているからだ。2号の拡大は永住への道を労働者に幅広く開くため、外国人受け入れの転換点となり得る。

 特定技能には1号と2号があり、2号は建設業と造船・船用工業の2業種のみを認めている。1号にある在留期間の制限は2号にはなく、在留10年で永住権取得も可能になるという大きな違いがある。出入国在留管理庁によると、2021年9月末時点では約3万8000人の外国人が特定技能1号で働いている。2号で在留する外国人はいない。

特定技能の1号と2号の違い。2号だと家族帯同が可能で、在留期間に制限がない。2号の拡大は永住への道を外国人労働者に開く
特定技能の1号と2号の違い。2号だと家族帯同が可能で、在留期間に制限がない。2号の拡大は永住への道を外国人労働者に開く
(one visaの資料を基に日経クロステック作成)
[画像のクリックで拡大表示]

特定技能の申請は1500以上の情報、100枚以上の書類

 門戸が広がるのは喜ばしいが、問題は多くある。挙げられるのが、筆者も経験している、ビザ申請のための非効率な手続きだ。特定技能の申請も同様だ。

 「特定技能の申請には1500以上の情報を集める必要があるので、とても大変です」と語るのはビザ取得サービス「one visa」の岡村アルベルト最高経営責任者(CEO)だ。岡村CEOは友人が強制送還されたことを契機に、外国人のビザに関する問題に携わり、解決したいと考えて同社を創設した。筆者がどうしても会いたいと思った、外国にルーツを持つ経営者の1人でもあった。

 特定技能の申請は非常に煩雑で、1件の申請で作成する書類は100枚を超えることもあるという。また特定技能を取得後も四半期ごとに面談し、面談したことを証明する書類を提出しなければならない。申請の期日を過ぎると、永住許可申請の条件の1つである10年という期間がリセットになる場合がある。