世界規模で配信事業者の主導権争いが過熱する中、「キラーアプリ」の1つとして熱視線が注がれているのが日本のアニメーションである。米Netflix(ネットフリックス)や米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)などはもちろん、最近ではソニーグループがアニメ配信サービス「Crunchyroll(クランチロール)」の運営会社を買収し、アニメ配信に注力する姿勢を見せている。そんな中、ネットフリックスが東京に設立したある施設がアニメ業界で注目されている。それが、21年9月に発表した新たな拠点「Netflix アニメ・クリエイターズ・ベース」である。
名称だけ見るとアニメ制作スタジオだと思うかもしれないが、さにあらず。ここはあくまで、アニメ制作会社やアニメクリエーターといった制作パートナーを支援するための拠点である。ネットフリックスの東京オフィスを拠点に、アニメ作品における「クリエイティブ」を統括するという立場であるアニメ チーフ・プロデューサーの櫻井大樹氏が主導して立ち上げた。
櫻井氏はこれまで、「櫻井圭記」の名で脚本家として活躍してきた。例えば、アニメ制作会社プロダクション・アイジーの「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」や「xxxHOLiC」、「精霊の守り人」と著名なアニメ作品で脚本を手がけてきた。スタジオカラー「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズで脚本協力をした経験もあるという。17年にネットフリックスに入社後、同社のオリジナル作品「ULTRAMAN」、「ドラゴンズドグマ」、「エデン」などの作品を担当してきた。
そんな経歴を持つ同氏が長らく感じていた日本のアニメ業界の課題を解決するために、アニメ・クリエイターズ・ベースを立ち上げた。櫻井氏の話の端々からは、この課題に対する危機感とそれを解決しようという意気込みが伝わってくる。