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 初対面の人との会話、中でも目的のない雑談のハードルは高いと感じる人が多いのではないだろうか。特に英語ではなおさらだ。記者もその1人である。ただ雑談せざるを得ないときもある。そんなときは「日本食」「日本車」「日本アニメ」のいずれかを会話のきっかけにすることにしている。新型コロナウイルスの感染拡大前、UberやLyftといったライドシェアを頻繁に利用した。そのとき、必ずと言っていいほど、この3つの話題で運転手が話しかけてくる。他の場面でも、この3つの話題を外国人に振ると、いずれかは「ヒット」し、盛り上がる。中でもファンの熱気がすごいのが日本アニメだ。

 だが残念なことに、海外ファンが日本アニメを視聴するのに利用するのは、主に海外企業が運営する配信サービスである。最近では、米Netflix(ネットフリックス)が日本アニメに注目し、配信に力を入れている。2020年2月の「記者の眼」では、そのことに日本人として寂しさと悔しさがあると書いた。そこでぜひ、アニメ事業を手掛けるアニプレックスをグループに持ち、17年に米アニメ配給企業を傘下にしたソニーに、日本のアニメを中心とするコンテンツ配信基盤(プラットフォーム)「Crunchyroll(クランチロール)」の運営企業を買収してほしいと記した。果たしてそれは現実になった。

 ソニーは20年12月、傘下の米Funimation Global Groupが、米AT&T傘下のクランチロール運営企業(米Ellation Holdings)を11億7500万米ドルで買収すると明らかにした。Funimation(ファニメーション)は、米Sony Pictures Entertainmentとアニプレックスの合弁企業で、海外のアニメ配信では知られた存在だ。

 クランチロールはファニメーションを上回る規模の配信基盤を有する。コンテンツ配信の対象の国や地域は200超で、登録ユーザー数は9000万人に達している。有料会員数は300万人超で、SNSのフォロワー数は5000万人である。自社スタジオで制作したオリジナルアニメ作品や、外部スタジオと共同で開発したオリジナル作品も配信中だ。

 多数の日本アニメのファンを抱えるクランチロールは、そんなファンたちに向けて、17年から年次の大型イベントを開催している。20年はオンラインとなったが、19年は「シリコンバレー」の大手IT企業や半導体メーカーがプライベートイベントを開く大きな施設を利用した。

2019年8月30日~9月1日に開催された「Crunchyroll Expo 2019」での発表イベントの様子
2019年8月30日~9月1日に開催された「Crunchyroll Expo 2019」での発表イベントの様子
(撮影:日経クロステック)
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 クランチロールはアニメにとどまらず、日本のゲーム業界からも熱視線を浴びている。アニメファンはゲーム愛好者(ゲーマー)でもある場合が多いからだ。19年のクランチロールへの取材によれば、同社を通じてアニメを視聴するユーザーの9割以上がゲーマーで、6割以上がより熱心なコアゲーマーという話だった。そこで、ゲームのパブリッシング(配信)も行っており、スマートフォンゲームを手掛ける日本企業が海外展開の際にクランチロールとタッグを組む例が増えていた。このほか、日本のコミック(漫画)のデジタル配信基盤としても注目されている。