就職活動中の学生たちが参加する、ベクトル主催の動画撮影会を2021年11月に取材した。意中の企業へアプローチする最初のステップとして、自分が何をやってきたか、どういうところに強みがあるのかといったPRを、1分程度の短い動画にまとめるという試みだ。
ここでいう「動画」は、録画コンテンツになる。動画は自分のスマートフォンで簡単に撮れる。リクルートスーツの学生たちがグループに分かれ、緊張した面持ちでリングライトを前に、セットしたスマホに向かって自己PRをしていた。
参加していた学生に聞くと、動画は評判がいい。Zoom上で面接30分などと設定して友人と練習したことがあるという法政大学の森雄紀さんは、「Zoomを介した模擬面接とは違った感覚だ。文章では伝わらない話し方や雰囲気が伝えられるPR動画で、自分の人となりをアピールしたい」と言い、動画撮影に前向きだ。青山学院大学の光富伶衣(みつとみれい)さんは「撮り直しができるし、動画のほうが自分らしさを出せる。慣れたら楽に撮れそうです」と話し、何度もスマホ画面に向かい、練習していた。
ただ、苦労していた学生がいたのも確か。1人でスマホに向かうのに違和感を覚えると話す人も。
海外でも学生が直面する状況は同じのようだ。英フィナンシャル・タイムズ(電子版)が2021年11月30日に掲載した記事によると、英サセックス大学の学生が、「アイコンタクトしようとしても自分の顔を見てしまう。笑顔がぎこちなくて、自然体になれない」とこぼしている。下や上に目線が行くと、原稿を読んでいると思われるらしい。
「エントリーシートの置き換えになっていくといい」
動画撮影会で利用していたのはベクトルの採用マッチングプラットフォーム「JOBTV for新卒」。学生側は自己PR動画や氏名/生年月日などの基本情報を送付することで企業にエントリーできる。企業側はそれを受け付け、応募した学生にメッセージを送ったり面談日程を調整したりできる。さらに、気になる学生にスカウトのメッセージを送れる。
JOBTV for新卒では、学生はPR動画を何度もアップロードできる。文章だけでは伝わりづらい、自分の魅力を視覚的に企業へ伝えられるメリットがあるとする。
ベクトルの説明スライドに「動画就活の時代です」とあった。イベントで学生をサポートしていた説明員は、動画を扱うJOBTV for新卒が「エントリーシートの置き換えになっていくといい」と話した。今後は中途入社、アルバイトといった採用活動に対して横展開していくという。