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 ルネサス エレクトロニクスは、大規模なリストラを実施した後、新たな成長を図るため、米Intersil(インターシル)*1、米IDT(Integrated Device Technology)*2、英Dialog Semiconductor(ダイアログセミコンダクター)*3という、海外の中堅アナログ半導体メーカー3社(以下、買収3社)を買収してきた。4社の既存売上高を単に足し合わせた以上の事業規模になるように、さまざまな施策を放っている*4。なかでも注目されるのが、顧客の応用開発サポートの強化である*5。製品開発に集中し顧客サポートへの関心が薄かった、かつての姿はない。あの手この手で顧客の応用開発を支援し、ルネサスのお得意様やファンを増やし、事業規模拡大につなげる。

関連記事 *1 Intersilとの統合は、体を張ってでも成功させる *2 ルネサスが米IDTの買収発表、アナログとデータの成長取り込む *3 脱Apple戦略を評価、世界企業を目指すルネサスがDialogを取得へ *4 欧州勢を尻目に好調のルネサス。損ではなかった米国企業の買収 *5 ルネサスがRISC-V先行宣言、Armマイコンの失敗は繰り返さない
顧客の要望が多様化
顧客の要望が多様化
(出所:ルネサス エレクトロニクス)
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 ルネサスはリストラの過程で、マイコンや車載SoC(System on a Chip)といった中核製品以外をそぎ落としてきた。中核製品の顧客は大企業の比率が高く、ルネサス製品の購入量が多いうえ、自社内に様々な設計者を抱えている。こうした大手顧客に対しては、製品評価のための評価ボードや少数の参照設計を用意すればよかった。今後、事業規模を拡大するためには、さまざまな層に顧客を広げる必要がある。こうした層の顧客では大手顧客のような豊富な設計者を抱えていない。ほぼ設計者がいないケースもある。例えば、クラウドファンディングで資金調達して開発するケースでは、規格やアイデアが重要なため、開発対象のエレクトロニクス機器の設計をすべて外注する場合が珍しくないという。

設計を外注する顧客が増える
設計を外注する顧客が増える
左側の大手顧客の場合、応用開発を社内で完結できる設計者がそろっている。一方、それ以外の顧客層では応用開発の一部だけを社内で行う方が多い。(出所:ルネサス エレクトロニクス)
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 幅広い層の顧客に製品を使ってもらうためには、顧客の開発サポートを手厚くする必要がある。同社の迫間幸介氏(IoT・インフラ事業本部 グローバル営業統括部 バイスプレジデント)によれば、大手顧客でも開発サポートに対する要望が変化しているという。例えば、開発期間短縮や開発コスト削減のために、差異化につながる開発/設計だけを自社で行い、その他の部分は外注したいという要望が増えている。また、機器に必要な機能が多様化し、その機能に明るい設計者が社内にいないケースも珍しくない。半導体メーカーとしては、評価ボードや少数の参照設計を用意するだけでなく、もっと踏み込んだサポートによって、顧客の設計作業を軽減したり、肩代わりしたりする必要がある。

顧客の要望が多様化
顧客の要望が多様化
(出所:ルネサス エレクトロニクス)
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