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 P2P(ピア・ツー・ピア)という考え方が保険の世界でも根付きつつある。損害保険最大手の東京海上ホールディングスは2020年10月、米Lemonade(レモネード)と戦略提携に向けた検討を開始すると発表した。レモネードは「P2P保険」の主要企業の1社として知られる。

 複数人のグループで組成した保険商品に関して、複数の契約者が保険料を出し合ってプールしておき、補償対象となる事象が起こればそこから保険金を支払う。これが一般的なP2P保険の仕組みだ。レモネードは家財保険やペット保険などをこの形で提供。AI(人工知能)やチャットボットなどを駆使し、保険加入は最短90秒、保険金支払いは同3分で可能という。プールしていた保険金が余ると、慈善団体に寄付する仕組みを提供しているのも特徴だ。

 東京海上は提携に向けた第1弾として、レモネードの再保険プログラムに参加した。提携を通じて、同社が持つノウハウの導入につなげていく考えだ。特に評価しているのは「新規顧客の獲得能力」だとする。「ほぼオンラインだけで、多数の新規顧客を獲得している新設の保険会社はなかなかない」と同社は評する。

「保険料後払い」の仕組みが特徴

 日本でもいくつかのP2P保険が登場している。先駆けと言えるのが、インシュアテック企業のjustInCaseが2020年1月から提供している「わりかん保険」だ。内容はがん保険で、がんと診断された場合、一時金として80万円を加入者に支払う。

 通常の保険と異なるのは後払いの仕組みを採ることだ。定期的に保険料を支払うのではなく、保険の対象者が発生した際に加入者が保険料を支払う。この保険料に上乗せされた一定割合の管理費(通常は30%程度)がjustInCaseの収入となる。

わりかん保険における支払いのイメージ
わりかん保険における支払いのイメージ
(出所:justInCaseニュースリリース。保険料に占める管理費の割合が30%の場合)
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 この例では事後保険料は229円だが、仮に保険料がこれ以上になったとしても上限保険料(20~39歳は月額500円)を超えて支払う必要はない。2020年12月現在で約3000人が契約しており、20~39歳が過半数を占める。

 P2P保険のメリットについて、justInCaseの畑加寿也代表取締役が強調するのは「透明性」だ。通常の保険料には正味の保険金のほか、保険会社の経費や利益が上乗せされており、中身が分かりにくい。これに対し、P2P保険は仕組みを明らかにしており、「合理的な料金の安さを実現している」(畑代表取締役)。海外のP2P保険では、プールしていた保険金に余りが生じたら寄付やキャッシュバックなどで還元している。

 ただし、P2P保険では透明性が高く保険会社というクッションが薄い分、加入者が相応のリスクを背負う必要がある点に注意が必要だ。代表的なP2P保険の1つである中国アント・グループ(Ant Group)の「相互宝(Xiang Hu Bao)」では、不正な給付請求がないかを相互に確認できる仕組みを提供している。請求の基となる診断書まで共有し、請求に対する異議申し立てもできる。一方で異議申し立てにより給付されなかった案件を再審査する陪審制度も設けており、公正さを保つ仕組みを備えるという。

 日本でP2P保険が普及するかはまだ分からない。レモネードと提携した東京海上ホールディングスも、同社自身がP2P保険を扱うかどうかについて明らかにしていない。