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 米Boston Dynamics(ボストンダイナミクス)の4脚歩行ロボット「Spot」が編集部に来てから、もうすぐ2カ月がたつ。自律移動しながら階段を自由に上り下りする運動性能の高さを目にしていると、Spotが人とともに暮らす未来もそう遠くないのではないかと思えてくる。そこで、今回はSpotの存在が当たり前になった少し先の未来を妄想してみた。

撮影:日経クロステック
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撮影:日経クロステック

 「散歩、行くよ」

 私の声に反応して、尻尾のない我が家の愛犬が起動した。玄関で眠っていたのは、数年前に購入した4脚歩行ロボットの「Spot」だ。Spotはにわかに立ち上がり、私を見上げる。顔はないが、こうして見ると本当に犬に似ている。

 「ねえ、そろそろ最新モデル買おうよ。ディスプレーに表情が出てかわいいんだって」

 高校1年生の娘がリビングから顔を出した。同級生の間ではいまだに2020年代前半に発売されたSpotの"旧モデル"を所有している家は珍しいらしく、しきりに買い替えを促してくる。

 「うちにそんな金ないよ。それに、このSpotだって少し前まで高級車並みの値段だったんだ。最新モデルよりずっと高かったんだぞ」
 「その話、聞き飽きたんだけど。お兄ちゃんは最新モデル買ったって」
 「あいつはアルバイトしてるからな。買いたいなら自分で金ためな」

 こちらの答えを聞き終えるや否や、娘は興味を失ったように部屋に戻っていった。確かに「見た目が怖い」という声も聞く旧モデルだが、数年前に奮発して購入したこともあって気に入っていた。「ドアを開けて」と語りかけると、さっとSpotが立ち上がり、動き始めた。背中に取り付けられたアームを器用に動かし、玄関扉を開ける。性能は旧モデルでも十分だ。

 外に出ると、冷たい風が身にしみた。マンションの廊下に出ると、管理会社の所有するSpotが掃除にいそしんでいる。背中の掃除機から床にホースを伸ばし、まるで象のようだ。階段を自由に上れるSpotは、清掃業務でも使われることが多い。階段を掃除できるだけではない。この建物のように一基しかないエレベーターを占有してしまう恐れがないからだ。

 Spotは主人である私についてくる設定になっている。これから近所をぶらぶらして散歩を楽しみながら、スーパーマーケットに向かう予定だ。

 もはやSpotをはじめとした4脚歩行ロボットは、街に当たり前にある存在になった。道を歩いていても、あちこちで主人に付いていく姿が見て取れる。多くは買い物や、自宅から会社までの通勤に使う。重い荷物を自動で持ち運んでくれるのだ。最新モデルからは表情機能が付いたからか、愛玩ペットとしての人気も出てきたようだ。純粋にSpotとの散歩を楽しんでいる人もいる。