PR
全2739文字

 以前、アーティスティックスイミング(旧名称はシンクロナイズドスイミング)の五輪メダリストの方と「ロボット審判」、つまり人間を介在しない判定システムについて話をしたことがある。そのとき彼女が放った言葉が印象的だった。

 「我々の競技でもぜひ欲しい。採点に影響する、ちょっとした手の角度の違いを審判が正確に見分けているとは私には思えない。ロシア代表という印象だけで得点が高くなっている気がするし……」

 2020年7月に、いよいよ東京五輪が開幕する。テクノロジーという観点で2016年のリオデジャネイロ大会からスポーツ界で進化したものの1つに、選手やプレーのトラッキングがある。東京五輪でも多くの競技に導入され、その中には採点支援に使われるロボット審判もある。

 東京五輪で初めて採用が見込まれるのが、富士通と富士通研究所が共同開発したAI(人工知能)を活用した体操の採点支援システムだ。3次元のレーザーセンサーを活用して競技者の動作をセンシングし、認識した骨格のデータからAIを介して瞬時に採点する。

富士通と富士通研究所が開発した体操の採点支援システムの画面例
富士通と富士通研究所が開発した体操の採点支援システムの画面例
(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 体操では“ひねり王子”こと白井健三選手のように、もはや人間の目では正確に判断できないレベルの技を繰り出す選手が出てきている。白井選手が床運動で世界で初めて成功させた技に、「後方伸身宙返り4回ひねり」がある。プロの審判ならひねりの回転数を正確に把握できたとしても、回転不足など減点につながる要素まで瞬時に見分けられるかと言えば、もはや難しい段階にまで来ている。

 富士通の採点支援システムは、こうした状況において人間の審判の採点を支援するのが役割だ。既に国際体操連盟は2018年11月に、このシステムの採用を決定し、2019年10月にドイツで開催された世界体操競技選手権大会などで稼働を開始している。

時速200km超サーブのテニスが先例

 ロボット審判導入の背景には、競技力の向上がある。既にプロテニスツアーでは、2006年から「ホークアイ(Hawk-Eye)」と呼ばれるカメラを用いたライン判定システムが導入されている。同システムを開発した英Hawk-Eye Innovations(ホークアイイノベーションズ)は、現在はソニー傘下の企業である。

 テニスではラケットの反発力が素材の改良などで高まったことにより、時速200kmを超えるような高速サーブを打つ選手が増え、人間の目では誤審が増えてきたことが導入のきっかけになった。実際には、ホークアイは判定補助として使われている。システムはコートの周囲に設置された8台の専用カメラの映像から、すべてのボールに対してインかアウトかを判定している。ただし、通常、その結果は公開されない。選手が人間の審判の判定に疑問を持った時だけ「チャレンジ」(基本1セットに3回)ができ、システムの判定が会場で披露され最終決定となる。

テニスの試合会場に設置されたホークアイのカメラ。通常はコートを囲むように8台(さらに2台がプレーヤーの動きをトラッキング)設置してボールの動きを追う
テニスの試合会場に設置されたホークアイのカメラ。通常はコートを囲むように8台(さらに2台がプレーヤーの動きをトラッキング)設置してボールの動きを追う
(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

日経クロステック登録会員になると…

新着が分かるメールマガジンが届く
キーワード登録、連載フォローが便利

さらに、有料会員に申し込むとすべての記事が読み放題に!
有料会員と登録会員の違い