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 「デジタルヘルスのベンチャーに対する選別の目が厳しくなっている」「成功するにはエビデンスと現場感、長期的視点が欠かせない」「課題が山積する地方にこそ、新規事業を生み出すチャンスがある」――。先日参加したパネルディスカッションで、このような議論が繰り広げられた。デジタルヘルスの現状を把握するのに役立つ内容だったため、今回はその一部を紹介したい。

 パネルディスカッションのテーマは「デジタルヘルスケアビジネス成功のカギとは」だった。パネリストはデジタルヘルス分野に造詣が深いデジタルハリウッド大学大学院特任教授で医師の加藤浩晃氏、アプリ「ポケットセラピスト」などを展開するバックテック代表取締役社長の福谷直人氏、産学官民の連携による事業創出を支援する福岡地域戦略推進協議会シニアマネージャーの片田江由佳氏の3人。私は進行役を務めさせていただいた。

オンラインで開催した「Healthcare Innovation Challenge in 九州 2022」でのパネルディスカッションの様子。スクリーン右上から時計回りに片田江由佳氏、福谷直人氏、加藤浩晃氏。主催は経済産業省九州経済産業局、九州ヘルスケア産業推進協議会(HAMIQ)、九州オープンイノベーションセンター(KOIC)、Healthcare Innovation Hub
オンラインで開催した「Healthcare Innovation Challenge in 九州 2022」でのパネルディスカッションの様子。スクリーン右上から時計回りに片田江由佳氏、福谷直人氏、加藤浩晃氏。主催は経済産業省九州経済産業局、九州ヘルスケア産業推進協議会(HAMIQ)、九州オープンイノベーションセンター(KOIC)、Healthcare Innovation Hub
(出所:九州ヘルスケア産業推進協議会)
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 まず議論になったのは、足元のデジタルヘルス関連ベンチャーの置かれた状況について。AI(人工知能)やロボット、アプリなどが医療現場でも活用されるようになり、デジタルヘルスへの注目度が高まりつつある。その影響で、ビジネスの立ち上げや拡大がしやすくなっているのか、それとも逆に参入が増えて競争が厳しくなっているのだろうか。

 これに対しては、「確かにデジタルヘルス分野は投資家からの注目を集めており、事業立ち上げ時の資金調達はしやすくなっている」という声が相次いだ。しかし一方で、事業拡大に向けた資金調達の局面では「選別の目が厳しくなっている」という指摘があった。成長が見込める限られたベンチャーに資金が集まる傾向があり、選ばれなければ成長に向けた資金調達が難しい状況にあるという。

 では成長に向けて、選ばれるベンチャーになるにはどうすればいいのか。デジタルハリウッド大学大学院の加藤氏は「(1)エビデンスと(2)現場感、(3)長期的視点が必要」と説く。具体的には(1)論文などでエビデンスを示して信頼を得る、(2)解決しようとしている課題が空想上のイメージではなく自分や身近な人が困っているといった現場感がある、(3)現在の事業が長期的にどのような未来につながっていくのかを示す――の3点が重要だという。これには全員が大きくうなずいた。