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 新型コロナウイルス感染症の治療などに用いる人工呼吸器の増産の動きが日本でも本格化してきた。薬事手続きにかかる時間の短縮や異業種企業による協力など、ものづくりで培った日本の技術力を人工呼吸器の迅速な増産に適用する体制が整いつつある。新型コロナの猛威が収まった後にも協力体制を維持し、国産の医療機器の競争力強化につなげることができるか注目される。

人工呼吸器を増産する動きが日本でも本格化してきたが…(写真はイメージ)
人工呼吸器を増産する動きが日本でも本格化してきたが…(写真はイメージ)
(出所:PIXTA)

 人工呼吸器を手掛ける日本光電グループは、富岡生産センタ(群馬県富岡市)で生産してきた人工呼吸器「NKV-330」の増産を2020年4月15日に発表した。NKV-330は、気管内挿管や気管切開を行わないNPPV(非侵襲的陽圧換気)適応の患者を対象とするマスク型の人工呼吸器。軽症患者向けにNKV-330を増産することで、医療機関が保有している気管挿管型人工呼吸器を重症患者に使用できるとする。

 さらに日本光電グループは、気管挿管型人工呼吸器の国内生産にも乗り出した。米国の日本光電オレンジメッド(カリフォルニア州)で開発・生産している気管挿管型人工呼吸器「NKV-550シリーズ 人工呼吸器」の日本における製造販売承認を4月24日に取得し、富岡生産センタで生産することを発表した。

自動車メーカーなどとの協力が始まった

 これらの迅速な増産対応を後押ししたのが、厚生労働省の4月13日の事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る人工呼吸器等の医療機器の承認審査等に関する取扱いについて」である。薬事手続きにかかる時間を短縮し、出荷可能時期の前倒しを図った。通常は4カ月ほどかかる手続きが、早ければ数日で済むという。実際に日本光電は「新型コロナウイルスに係る医療機器として、厚生労働省および医薬品医療機器総合機構(PMDA)において必要な薬事手続きを優先的かつ迅速に処理された」とする。

 人工呼吸器の増産を後押しするのは手続きの短縮だけではない。日本光電は人工呼吸器の生産に「自動車メーカーや電機メーカーなどのパートナーの協力を得ている」と公表した。協力だけでなく人工呼吸器の生産を受託する企業も現れた。ソニーはソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズにおいて、アコマ医科工業(東京・文京)が開発・設計した人工呼吸器の生産を受託することを5月8日に発表。7月に量産を開始し、9月中に500台を生産する計画だ。今後も状況に応じて他の人工呼吸器メーカーからの生産受託の可能性を検討していくという。