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米FDAの認可取得に苦戦

 社内から人材を集める他にも、カシオは海外展開に向けて着々と準備してきた。海外市場開拓のノウハウを習得するために、2021年2月には市場規模は小さいものの皮膚がんの罹患率が高いとされるオセアニア地区(オーストラリアとニュージーランド)でダーモカメラの販売を開始。3月には海外市場で重視される医療機器の品質管理システムに関する国際標準規格「ISO13485」を製造拠点の山形カシオが取得した。

 準備を整えたカシオは、注力市場と位置付ける米国へ参入するための最初の関門に挑んでいる。それは米FDA(食品医薬品局)からの医療用デジタルカメラの販売認可の取得である。カシオにとってFDAへの申請は初めてのため、苦労しているようだ。コンサルタント会社の助言を得ながら、FDAの要求内容を正しく理解することから始めたという。

 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響も受けた。通常は申請の前にFDAと「Pre-Meeting」が開催されるのだが、コロナ禍で開催が見送られた。事前の打ち合わせがなく、そのまま申請に至ったため、手探り状態が続く。FDAから不足する資料を何度も求められたりしており、急きょ書類の準備に追われるなど対応に苦慮している。そのため想定していたよりも認可を取得する時期が遅れているという。現在は認可を待っている状態だ。

AIを活用した診断支援機能の提供も

 FDAの認可を得てダーモカメラの販売にこぎ着けた後もカシオの挑戦は続く。ダーモカメラ単体の販売だけでなく、AI(人工知能)を活用した診断支援機能の提供も目指しているからだ。

 ダーモカメラやその他のカメラで撮影した画像データをクラウドに送ると、AIが解析して皮膚がんなど皮膚の病気の可能性を示し、医師の診断を支援する。信州大学と共同で開発しており、2022年3月末までに日本で承認申請し、早ければ2023年3月末までに事業化を目指す。海外でも2024年3月末までの事業化を計画する。

ダーモカメラなどのハードウエアとAI診断支援システムなどを連携させるイメージ。カシオはソフトウエアやクラウドも活用して医療関連事業を国内外で拡大する計画だ
ダーモカメラなどのハードウエアとAI診断支援システムなどを連携させるイメージ。カシオはソフトウエアやクラウドも活用して医療関連事業を国内外で拡大する計画だ
(出所:カシオ計算機)

 AI診断支援システムの海外展開に向けた準備も既に始めている。海外の患者に適した解析が可能なように、2020年に海外の大学と連携して、皮膚の画像データの収集を始めた。アルゴリズムの開発に必要な数は集まっており、現在はAIの学習を進めている段階という。

 カシオはダーモカメラなどのハードウエアと、AI診断支援システムなどのソフトウエアやクラウドを活用して医療関連事業を国内外で拡大させていく計画だ。現在のカシオの医療関連事業は「メディカル企画開発部」という部署で手掛けているが、事業拡大を実現できれば「メディカル事業」への飛躍の道が見えてくるだろう。