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 腕時計「G-SHOCK」などを手掛けるカシオ計算機が、医療関連事業の拡大に動いている。日本で販売する医療用デジタルカメラ(デジカメ)などを海外にも展開し、年間数億円規模の医療関連事業の売り上げを、数年後に十億円超に引き上げる計画だ。

 海外市場攻略に向けて、社内から経験豊富な人材を集めて準備を進めてきた。なかには医療と関係がなさそうな関数電卓のマーケティング担当者も含まれているという。競争の激しい国内デジカメ市場で特徴ある製品を生み出した過去も生かしつつ、カシオはもくろみ通り医療関連事業を拡大させることができるのか。

皮膚科医向けの医療用デジタルカメラ。小型化や高速連写などコンシューマー向けデジタルカメラで培った技術が使われている
皮膚科医向けの医療用デジタルカメラ。小型化や高速連写などコンシューマー向けデジタルカメラで培った技術が使われている
(出所:カシオ計算機)

 カシオの医療関連事業の中核製品は、ダーモカメラと呼ばれる皮膚科医向けカメラ「DZ-D100」になる。「QV-10」などの特徴ある製品を次々と生み出しながらも撤退を余儀なくされたコンシューマー向けデジタルカメラで培った技術を投入。レンズ技術や小型化技術、高速連写技術、画像処理技術などを活用し、皮膚の表面や内部を観察するための「偏光」「非偏光」「UV」という複数の撮影が簡単にできるようにした。2019年5月に日本で発売済みで価格は21万8900円(税込み)になる。国内の皮膚科医の人数は1万4000人程度とされるなかで、これまでに1000台以上を販売したという。

 カシオは海外展開によってダーモカメラの販売台数を大きく増やす計画だ。海外市場のなかでも米国を注力市場と位置付ける。米国の皮膚科医の数は日本と同程度とされるが、かかりつけ医を含めるとダーモカメラを利用しそうな医師の数は多くなると分析する。皮膚がんの罹患(りかん)率が高く、皮膚の病変を確認する需要が多いという背景もある。米国に続いて、英国、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアなどの欧州市場、さらに台湾とシンガポールを中心にマレーシア、ベトナムといったアジア市場へと展開していく。

 海外市場攻略に向けて、海外での経験が豊富な社内人材を集めて準備を進めてきた。その一人が関数電卓のマーケティング担当者だという。

 関数電卓と医療関連事業の共通点はどこにあるのか。関数電卓のマーケティングを手掛けてきたメディカル企画開発部マーケティング室の吉岡崇氏は「海外の数学教師とのネットワークを構築してきた。そのノウハウが医師との関係構築に役立つ」と意気込む。吉岡氏は海外の数学の授業における関数電卓の活用方法を数学教師にヒアリングし、開発現場に届けて商品開発に役立ててきた。

 医療関連事業でも同様に、医師との関係構築が市場攻略のカギを握る。ダーモカメラの開発時には、日本の皮膚科医の要望を聞きながら必要な機能を盛り込んだ。海外の診療方法に合わせて改良するなど、異なる市場で求められる機能や仕様を商品に反映していく仕組みを構築するため、海外の医師とのネットワークが欠かせない。その結果として「競合企業に負けない強い商品を作ることができる」(吉岡氏)とする。