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 新型コロナウイルスを契機に、「はんこ文化」が批判にさらされている。在宅勤務が求められるなか「押印業務のせいで出社を余儀なくされる」とやり玉に挙げられた格好だ。安倍晋三首相がデジタル化にかじを切るように指示を出すなど「脱はんこ」の機運は盛り上がりをみせているが、拙速な対応はオンラインへの移行を遅らせるだけでなく、逆にはんこへの執着を強くさせてしまう懸念もある。

 はんこの歴史は古代メソポタミアの時代まで遡れる。所有権の目印などに使用されたとみられる。興味深いのは、このはんこが使われなくなったのは、技術革新によるものだったらしいという点だ。

はんこの歴史は古代メソポタミアの時代まで遡ることができる
はんこの歴史は古代メソポタミアの時代まで遡ることができる
写真:123RF
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 古代メソポタミアの時代のはんこは「円筒印章」と呼ばれ、独特の形状をしている。丸い石材の側面に柄を彫り、粘土に転がすことによって押印する。メソポタミアと言えば「くさび形文字」だが、これも粘土板に文字を刻む。両方が一緒に使われることもあったようだ。

 円筒印章が使われなくなった理由はシンプルである。主要な情報メディアが粘土板ではなく、パピルスのような紙になったからだという。紙の上で石を転がしても押印することはできない。メソポタミアのはんこは、用をなし得なくなったため自然と姿を消していったというわけだ。

 メソポタミアの例に倣うのであれば、日本のはんこ問題も解決されそうなものだ。オンラインによる手続きや承認、契約などを成立させる技術革新は既に終わっている。しかし解決していないのは、2つの課題がクリアされてこなかったからだろう。社会的コンセンサスの形成と経済合理性の実現である。