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日経FinTech編集長の原 隆
日経FinTech編集長の原 隆

 「なぜ日本では災害が度々発生するのに、日本人は毎回秩序を守れるのでしょうか」

 韓国の中学生に突如、こう質問をされた。

 海の日を含む3連休、筆者は韓国を訪れた。忌まわしき事故から既に4年が経っていた。

 セウォル号沈没事故。前代未聞のフェリー事故は、多くの高校生の命を奪った。今回の旅で安山市にある犠牲者が通っていた高校へ足を運んだ。そこには日本人が来ると知った中学生3人が待っていた。そこで飛び出したのが冒頭の質問だった。

 韓国の中学生たちは西日本で発生した豪雨災害も、2011年に発生した東日本大震災も知っていた。そして、セウォル号が沈没しかけたとき、避難誘導をすることなく我先に逃げた船長をはじめ、一部の大人たちの無責任さも知っていた。

 事故発生時、セウォル号には乗員乗客476名が乗っていた。そのうち299名が死亡し、そのうち250名が修学旅行の高校生だった。後の調べで、船内放送で繰り返し流れる待機命令に従順に従った高校生の多くが命を落とした事実が判明している。

 なぜ日本人は秩序を保てるのか。この質問に相対した答えをすぐに返せなかった。帰路に就く間、ずっとこのことを考えていたが、仮説として一つの解にたどり着いた。

 列をなす、行列に並ぶ。日本では日常でよく見かける風景だ。ただ、見方を変えると行列の発生は一種の「摩擦」が生み出す現象とも言える。究極的に効率的な社会に摩擦は発生せず、ひいては行列は起きえない。だが、実際はファストフード店でも、高速道路でも、タクシー乗り場でも、絶えず行列が起きている。

 こうした非効率さを解消するために、テクノロジーがある。タクシー配車アプリをはじめとするマッチングサービスなどは好例だし、事前注文の仕組みを導入する店舗も少しずつだが増えてきた。キャッシュレス決済も同様だ。いかにスムーズに決済を終えられるかは、QRコード、非接触決済、顔認証などのテクノロジーの真価が問われている。

 だが、どうも日本は摩擦をあえて求めている風に見えてならない節がある。現金のやり取りはもはや摩擦でしかないが、不便にもかかわらず、一向に現金のやり取りを止める気配がない。日本はテクノロジーの導入や活用に対して積極的と言われながら、なぜかグローバルで見たときのキャッシュレス決済比率は低いままにとどまっている。