PR
日経クラウドファースト編集長 中山秀夫
日経クラウドファースト編集長 中山秀夫

 利用者になりきって「台本」を書く――。といっても、演劇や映画の話ではない。米アマゾン・ドット・コムの「Amazon Echo」や米グーグルの「Google Home」といったAI(人工知能)スピーカーのアプリ開発について取材したとき、何が重要かと聞いて、出てきた答えだ。

 アプリの台本といっても、馴染みのない人もいるのではないか。そこで、AIスピーカーのアプリ開発に詳しい野村総合研究所の馬勝淳史氏(金融ITイノベーション事業本部 ビジネスIT推進部 副主任)が作成した、台本の具体例を紹介しよう。下記は、銀行の貯金専用口座に貯金や残高照会をするAmazon Echo向け架空アプリ「まい貯金箱」の台本である。なお台本に出てくる「アレクサ」とは、Amazon EchoのAIの名称だ。

利用者:アレクサ、まい貯金箱を開いて。

アレクサ:お久しぶりですね。なにか御用でしょうか?

利用者:現在の貯金額を教えて。

アレクサ:貯金額ですね。現在12万円貯まっています。続けて貯金しますか?

利用者:はい。

アレクサ:いくら貯金をしますか?

利用者:1万円。

アレクサ:1万円を貯金でよいでしょうか?

利用者:お願い。

アレクサ:現在13万円になりました。また貯金してください。ありがとうございました。

 台本とは、こんな具合に、利用者とAI(この場合はアレクサ)による対話の流れを記したものだ。

 この台本作成は、AIスピーカーアプリ開発の最上流に当たる要件定義工程で行う。従来のGUI(Graphical User Interface)アプリ開発における「ペーパープロトタイピング」(紙芝居のように画面遷移の流れを示しユーザーからフィードバックを得るタスク)のようなものだが、具体的な画面仕様を決める「画面設計」の性格も兼ねる。

 なぜ画面設計に当たる台本作成を、最上流の要件定義工程で行うのか。それは、AIスピーカーアプリの生命線は使いやすさにあり、機能を充実させることよりも優先度が高いからだ。台本作成を通じ、開発する機能がAIスピーカーのユーザーにとって本当に使いやすいかを見極める必要がある。

 例えば「銀行口座開設」のように入力項目が多い機能は、AIスピーカーでは本質的に使いにくい。こうした機能はAIスピーカーアプリのスコープから外すのが一般的だ。

 台本の出来は、AIスピーカーアプリの使いやすさに直結する。ダメな台本を基にAIスピーカーアプリを開発しても、ユーザーテストで作り直しを求められるのがオチである。