緊急事態宣言が解除されて間もない2021年10月初旬、以前から申請していた子どものマイナンバーカードを受け取った。健康保険証の代わりにもなり、単体で通用する身分証が手に入るのは、親としてありがたい。カード受け取りのため休日に役所まで付き合わされた子どもたちはいい迷惑だったろうが……。
試しに子どものカードで、行政手続きのポータルサイト「マイナポータル」にログインすると、健康保険証の資格情報をPDFでダウンロードできるようになっていた。今後は病院で処方された薬剤情報も確認できるとのことで、子どもの通院に付き添う親としては大変助かる。
マイナポータルは2021年5月末のリニューアルを経て、以前より画面が分かりやすくなり、使いやすくなった。
世帯情報や税・所得情報をダウンロードできる他、日本郵便や日本年金機構とID連携したり、e-私書箱経由で保険料控除証明書などを受け取ったりできる。
ただ、マイナポータル開設当初からのユーザーとして、使い勝手で気になる点は依然として残る。
本稿では、マイナンバーカードやマイナポータルの使い勝手について、現行法上の制約や開発の経緯など「大人の事情」をあえて無視し、使い勝手を最優先とした改善を提案したい。原則としてiOS端末での操作を前提にしている。
課題1:マイナポータルを通じた電子申請の品質がピンキリ
マイナポータルやマイナンバーカードについて、ユーザーが直接感じやすい最大の不満はこれだろう。電子申請のUI(ユーザーインターフェース)の品質が一定せず、ピンキリなのだ。
例えば筆者は2021年6月、マイナポータルの電子申請機能「ぴったりサービス」経由で、居住する自治体に児童手当の現況届(受給要件を満たしているかどうかを確認するための書類)を提出した。マイナンバーカードとスマートフォン向けのマイナポータルアプリを使えば、氏名・住所を自動入力できる。スマホにマイナンバーカードをかざして4桁の暗証番号を入力し、「申請者」の氏名・住所などを自動入力したまでは良かったが、その後に現れた入力フォームに頭を抱えた。
Webフォームにおいて「提出年月日」の入力を求められたのは、これが初めてかもしれない。提出時のサーバーの時刻情報か、電子署名のタイムスタンプで代替できないものなのか。
さらに、前の画面で申請者の氏名や住所を入力済みなのに、改めて「受給者」 として申請者と同じ氏名やフリガナの入力を求められた。ちなみに、受給者としての銀行口座や名義は以前に登録済みだ。申請者と受給者が異なる場合だけ入力を求める仕様にできないものか。
恐らく、当該自治体の紙ベースの申請用紙と全く同一の項目をWebフォームに設定したのではないか。これでは紙による申請と比べ、デジタルならではの利便性を感じにくい。
課題1の解決策:UIレビューのプロセスを義務付ける
電子申請の使い勝手が安定しなければ、ユーザーはデジタルの利便性を実感できず、逆に紙の申請よりもイライラが募ることになりかねない。
解決策としては、電子申請のWebフォームを設計する際に「UIレビュー」のプロセスを義務付けてはどうだろうか。
具体的には、役所やシステム側で補完可能な情報の入力をユーザー側に強いていないかをチェックする。Webフォームの設計担当者がチェックリスト方式で自己申告してもいいだろう。
紙の申請の業務フローをなぞったままでは、デジタルの使い勝手は高まらない。利用者目線でUIレビューをすることで、省庁や自治体の業務フローの改善にもつながりそうだ。