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 全米有数の犯罪多発都市であるカリフォルニア州オークランド市で近年、銃撃事件の件数が激減している。「銃撃検出システム」を警察が導入することで、銃撃が起こった場所を即座に見つけ出し、警察官を派遣できるようになったためだ。「防犯テック」の最前線を紹介しよう。

 シリコンバレーから自動車で1時間弱の場所にあるオークランド市は、治安の悪さで知られている。米FBI(連邦捜査局)が発表した2017年の統計によれば、同市で発生した暴力事件の件数は人口10万人当たりで1299件。全米で2万近くある都市の中でも、14番目に悪い数字なのだという。

 ところがそんなオークランド市で、銃撃事件の件数が急減している。1平方マイル当たりの銃撃事件は2012年に671件だったのが、2013年に527件、2014年に301件と減少し、2017年には197件まで減った。6年間での減少率は70.6%にも達する。

 同じ期間、オークランド市は景気が良くなっていたこともあり、暴力事件の件数も減ってはいた。人口10万人当たりの暴力事件の数は2012年の1993件が、2017年には1299件に減った。しかし銃撃事件の減少率が70.6%に対して、暴力事件の減少率は34.8%に留まる。銃撃事件だけが突出して大きく減ったのだ。

銃撃場所を60秒以内に特定

 この原動力となったのが、オークランド市警察が2012年に導入した銃撃検出システム「ShotSpotter」だ。スタートアップの米ショットスポッター(ShotSpotter)が開発した。ShotSpotterは町中に音響センサー(マイク)を張り巡らせ、銃撃が起こった場所を60秒以内に特定して警察に通報する。

 「オークランドでは銃撃が発生したら、警察が以前より早く現場にやって来られるようになった。ギャングが警戒して銃撃を控えるようになったため、銃撃事件が減少した」。ショットスポッターのサム・クレッパー(Sam Klepper)上級副社長はそう説明する。

ショットスポッターのサム・クレッパー上級副社長
ショットスポッターのサム・クレッパー上級副社長
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 複数の音響センサーを使って銃撃の場所を特定する技術そのものは、100年以上前となる第1次世界大戦の頃から存在する。しかし従来は、音響センサー網を整備したり保守したりするのに大きな手間がかかるため、戦場以外で銃撃検出システムが導入されることはほとんどなかった。ショットスポッターは銃撃検出システムに「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)方式」を取り入れることで、大きな成功を収めた企業なのだ。

 ショットスポッターが提供する銃撃検出システムのサービスを詳しく見ていこう。銃撃音を捉える音響センサーは、ショットスポッターが警察からの依頼に基づいて町中に設置する。「市役所など公共の建物や街灯、商業ビル、ショッピングモール、アパート、携帯電話基地局などに音響センサーを設置する。その数は1マイル四方の範囲に20個程度になる」(クレッパー氏)。

ショットスポッターの管理画面。銃撃が起こった場所(大きな赤い点)を地図上で確認できる
ショットスポッターの管理画面。銃撃が起こった場所(大きな赤い点)を地図上で確認できる
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