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 半導体部品の寿命が原因で、米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が米Tesla(テスラ)に対し、リコールを実施するように求めた。対象は、テスラが18年初頭までに製造した、電気自動車(EV)の高級セダン「Model S(モデルS)」の12~18年モデルと、高級SUV(多目的スポーツ車)「Model X(モデルX)」の16~18年モデルである。その実態を探るべく、日経BPが2019年12月~2020年3月に発刊した「テスラ『モデル3/モデルS』徹底分解」シリーズ(以下、テスラ徹底分解)で、対象となる半導体部品を特定した。その結果、当時テスラがタブレット端末やパソコン(PC)などの民生機器で使われた部品を集めて車載情報通信システム(IVI)を構成したことが、今回のようなリコール要請につながったのではないかと推測できた。

 NHTSAの組織「Office of Defects Investigation(ODI)」がテスラ幹部に対して送付した書簡において、問題の原因として指摘されているのは、モデルSおよびモデルXのIVIに相当する「MCU(Media Control Unit)」内にあるeMMC対応のNANDフラッシュメモリーである。「P/Eサイクル(書き換え回数)」が3000回で、データの書き換えを繰り返すうちに、5~6年ほどで寿命(書き換えサイクルの上限)を迎えて、MCUの不具合につながると指摘している。

不具合があったとされるMCU
不具合があったとされるMCU
運転席横の巨大なディスプレーがMCUである。ハッチバック、エアコン、ライトなど様々な操作がこのタッチパネルを通して可能である。(写真:テスラ)
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MCUの不具合でどんな危険が生じるか

 MCUはIVIであるため、自動車の「走る・曲がる・止まる」に直接影響するものではない。ただし、ここに不具合がでると安全性に支障がでるとする。例えば、後方確認用(リアビュー)カメラの映像を運転手が確認できなくなることを指摘している。

MCUの外観
MCUの外観
(図:「テスラ『モデル3/モデルS』徹底分解【全体編】」(日経BP総研 クリーンテック ラボ/日経クロステック監修)より抜粋)
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 テスラは車両のボディーの制御のほぼすべてをMCUが持つタッチパネル式ディスプレーを通じて行える。例えば、空調は専用の物理ボタンがなく、ディスプレーを通じて操作する。このため、MCUが動かなくなると空調システム(HVAC)を操作できなくなる。これにより、フロントガラスの曇り止め・霜取り機能を起動できずに前方の見通しが悪くなり、事故の危険性が高まると指摘している。

 さらにMCUの不具合によって、ADAS(先進運転支援システム)や方向転換(ターン)時におけるアラートなどに悪影響を与えて、事故の危険性が高まるとしている。例えば、ウインカー音(blinker sounds)やドライバーに対する警告音が鳴らなくなる。