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 ゲームプラットフォームで長年、ライバル関係にある米Microsoft(マイクロソフト)と、米Sony Interactive Entertainment(SIE、ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が激しい買収合戦を繰り広げている。直近では、2022年1月18日(米国時間)にマイクロソフトが米国の大手ゲーム企業Activision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)を687億米ドルで買収すると発表。その金額でゲーム業界を驚かせた。それから約2週間後の同月31日(同)、今度はSIEが総額36億米ドルで米Bungie(バンジー)を買収すると発表。これまでもゲーム会社などを買収してきた両社だが、その金額や頻度が20年ごろから増加傾向にある。

SIEがBungieを買収
SIEがBungieを買収
(出所:SIE)
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 理由は大きく2つある。1つは、ゲームプラットフォーマー自らが、自社プラットフォーム向けに販売するゲームソフト、いわゆる「ファーストパーティー」製のゲームの強化のためである。以前であれば、ゲームプラットフォーム、すなわちゲーム機とゲームソフトが紐(ひも)づいており、どのゲーム機を選択するかによってプレーできるゲームがほとんど決まっていた。ところがパソコンやモバイル端末の性能向上により、さまざまな端末でゲームを手軽にプレーできるようになった。加えて、ゲーム開発にかかるコストが増大。開発コストを回収するため、ゲームソフトを手掛ける企業の多くがゲーム機やパソコン、スマートフォンなど、複数の端末に対して横断的にゲームを販売している。その結果、ゲームプラットフォーム間でのプレーできるゲームの違いが少なくなっている。

 そこでマイクロソフトやSIEのようなゲームプラットフォーマーは、差異化を図るために、自社でゲーム開発スタジオを抱えてファーストパーティー製のゲーム開発に力を入れている。他のゲームプラットフォームに展開する場合もあるが、基本的には自社のプラットフォームに向けて独占的に販売する「エクスクルーシブタイトル」が多い。

 マイクロソフトはこれまで、大手ゲーム会社を多額の資金を投じて買収してきた。これにより、人気ゲームとそのゲームをプレーする多数のユーザーを一気に取り込んだ。例えば、14年に「Minecraft(マインクラフト)」を手掛けるスウェーデンMojang(モヤン)を25億米ドルで買収。20年9月には、米国の大手ゲーム企業Bethesda Softworks(ベセスダ・ソフトワークス)の親会社である米ZeniMax Media(ゼニマックス・メディア)を75億米ドルで買収すると発表し、21年3月に完了している。

 マイクロソフトがゲーム会社買収に多額を投じる目的の1つは、SIEに追いつき、追い抜くためである。人気作を抱えるマイクロソフトだが、ファーストパーティー製ゲームでSIEの後じんを拝しているというのが、ゲーム業界のもっぱらの評価である。マイクロソフトによれば、アクティビジョン・ブリザードの買収が完了すれば、中国の騰訊控股(テンセント)やソニーグループ(ソニーG)に次ぐ世界第3位の売上高のゲーム会社になるという。

 大型買収を仕掛けるマイクロソフトに対してSIEは19年以降、小規模なゲーム関連企業の買収を継続的に実施してきた。とりわけ21年は頻度が高かった。SIEがこれまで買収してきたゲーム会社の大半は、もともと関係が深かった企業だ。それらを内部に取り込んだ形であり、従来の自社スタジオを拡張するような流れだった。一方、36億米ドルでのバンジーの買収は、この流れと明らかに異なる。SIEにとって過去最大の買収であり、マイクロソフトの一連の巨額買収が背中を押した可能性は高い。バンジーの買収前は、12年の米Gaikai(ガイカイ)の3億8000万米ドルがSIE(当時はSCE)による買収の最高額だった。

 もっとも、ゲーム事業の強化だけがマイクロソフトやSIEによる買収劇の目的ではないだろう。今後拡大が期待される「メタバース経済圏」への布石。これが、冒頭で挙げた2つの理由のうちのもう1つである。