「ステアリングに手を置かなくても、運転席にいなくてもオートパイロットは動作し続ける“裏技”がある。テスラ車オーナーならほとんどの人が知っている。やるかやらないかは別だが」――。2021年4月17日夜、米Tesla(テスラ)の高級セダンの電気自動車(EV)「モデルS」が木に衝突して炎上する事故が起き、乗員の男性2人が死亡。うち1人が助手席、もう1人が後部座席に座っており、衝突時に運転席が無人だったのは、ほぼ確実だと米メディアが報じた。この件で運転支援システム「オートパイロット」についてテスラ車を利用している人物に話を聞いたところ、冒頭のような回答を得た。では、どのようにすると、運転席に人がいなくてもオートパイロットは作動するのか。
端的に言えば、ステアリング部分に重りを付ける。重りによって、ステアリングのセンサーに「手が置かれている」と誤認識させる。そうすれば、ドライバー不在のままでオートパイロットが動作し続ける。今回の死亡事故の後に、米国の消費者情報誌Consumer Reports(CR)誌が重りをステアリングにつるすなどして、こうした「抜け道」を再現。これを米メディアが大きく取り上げた。ほかにも、同種の動画がYouTubeなどの動画共有サイトにいくつも投稿されている。その上、Amazon.comなどのオンラインサイトで調べると、さまざまな専用の重りが見つかる。数十ドルで堂々と売られており、簡単に入手ができる。
今回の死亡事故は調査中で、本稿執筆時に原因ははっきりしていない。一方で、テスラCEO(最高経営責任者)のElon Musk(イーロン・マスク)氏は4月19日にツイッターで「これまでに回収されたデータログからは、オートパイロットが有効になっていない。(最新のオートパイロットシステムである)FSD(完全自動運転向けの車載システム)も購入していない」と述べている。FSDはオプション扱いで、搭載しなくてもオートパイロット機能を使うことができる。
ただ、オートパイロットが有効になっていないとすると、前述の抜け道は今回の死亡事故とは関係がない。あり得るとすると、オートパイロットを起動し、ハンドルに重りを付けて運転席から助手席に移動した直後に、何かが原因で急にオートパイロットが解除されてカーブを曲がり切れずに事故が発生したため、オートパイロット有効のログが残らなかった、という可能性である。繰り返しになるがあくまで可能性の1つで、詳細は現時点で不明だ。