「プライバシーは基本的人権」――。この方針を貫く米Apple(アップル)は、年次開発者会議「WWDC21」(米国時間2021年6月7~11日、オンライン開催)で、新たなプライバシー保護に向けた取り組みを発表した。例えば、Webブラウザーや電子メールの利用履歴などから、ユーザーの個人プロファイルを第三者が精度高く推測できないようにする機能を投入する。同社は21年4月末に、iPhoneやiPadなどの端末の固有IDの外部への提供を制限する措置を開始するなど、プライバシー保護に向けた取り組みを強化中である。今回の新たな取り組みは、その延長線上にある。スマートフォンが生活必需品になり、個人情報を扱う機会が増える中で、その扱われ方や保護などに対してユーザーの関心が高まっている。それだけに、プライバシー保護の強化は、広告事業やデジタルマーケティングなどに打撃になる一方で、ユーザーにとって新たな付加価値になりそうだ。
iPhone向け新OS「iOS 15」など、21年秋にリリース予定のアップル製品向け新OS群や新サービスなどで導入する新たなプライバシー保護策は大きく3つある。(1)メールアプリによるアクセス履歴の匿名化、(2)プライバシー情報へのアクセス結果の見える化、(3)クラウドサービス「iCloud」への新たなプライバシー保護機能の導入、である。
(1)に関しては、IPアドレスをマスキング(隠ぺい)する「メールプライバシー保護」と呼ぶ機能をメールアプリに導入する。広告メールなどでは、本文中に見えない画像ピクセルを埋め込むなどして、差出人がどのユーザーがメールを開封したかといった情報を収集しようとする。そこでメールアプリに新たに「メールプライバシー保護」機能を導入する。これにより、ユーザーがメールを開封したタイミングを差出人に知られるのを防ぐ。加えて、IPアドレスを隠ぺいすることで、差出人がユーザーのIPアドレスをユーザーの他のオンライン上での行動とひもづけたり、ユーザーの位置を把握したりすることを防止する。
(2)では、各アプリがプライバシーに関わる情報にどのように利用したのか把握できる「アプリケーションのプライバシーリポート」を提供する。過去7日間、位置情報や写真、カメラ、マイク、連絡先などの情報にアプリがアクセスした頻度などを確認できる。ユーザーが、頻度や使われ方が適切でないと判断したら、それぞれのアプリのプライバシー項目を、リポートの画面から設定画面に飛んで変えられる。加えて、アプリがやり取りしている第三者のドメインを表示し、自分のデータが誰と共有されている可能性があるかを確認できる。