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 新型コロナウイルスの感染拡大によって、米国では2020年3月以降、多数の人が集まる大型イベントは軒並み中止か延期、オンライン開催に移行せざるを得なくなった。いったん2020年後半に延期したイベントも、依然として感染拡大が収まらないことから2021年への延期やオンライン開催に次々と移行している。この流れは2021年も続き、米国外にも広がるだろう。

 実際、2021年1月に米ラスベガスで世界最大級のコンシューマーエレクトロニクス関連の展示会「CES 2021」は、全面的にオンライン上で開催される。主催する米民生技術協会(CTA)が2020年7月28日(現地時間)に明らかにした。

 数十人から数百人規模の中小規模のイベントであれば、リアルと同じような価値をオンラインで提供することはある程度可能だ。しかし、CESのような大型イベントと同じ、あるいは新しい体験や価値をオンラインで提供するのは難しい。それだけに、主催団体や企業、運営会社などの腕の見せどころになっており、試行錯誤が続いている。参加企業も、出展や講演方法に頭を悩ます。そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大後、早い段階でイベントのオンライン化に取り組んだ米国企業の取り組みは参考になる。

講演を絞り、映像にこだわったAdobe

 例えば米Adobe(アドビ)は、2万3000人以上の参加が見込まれた3月末からの「Adobe Summit」を急きょオンライン化して無償で実施した。最終的に登録者は10万人を超えた。従来400本近いセッションがある大型イベントだったが、重要性や人気、スピーカーの状況などを鑑みて、約120のセッションと基調講演に絞り込んだ。

 世界から多くの視聴者が参加することから、主要な講演には翻訳の字幕を付けた。例えばAdobe CEOのShantanu Narayen氏の講演では、英語のほか、中国語、オランダ語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、スウェーデン語の字幕を利用できるようにした。

Narayen氏の講演。オンライン化では、幹部が自宅で収録した
Narayen氏の講演。オンライン化では、幹部が自宅で収録した
(出典:Adobe)
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 Adobeは、映像や画像処理のデジタルツールを開発するだけに映像の品質に特にこだわった。エグゼクティブクラスの講演者の自宅には、4K映像対応のカメラと簡易的な照明装置を送付。同社 Experience Marketing担当Vice PresidentのAlex Amado氏は「自宅のビデオ映像を見せてもらい、ベストな撮影場所や光源をアドバイスした」と話す。映像の編集や配信プラットフォームについては、同社のサービス群を活用した。「オンラインで共同作業をすることで、動画編集などを短時間でこなせた」(同氏)とする。

 従来のイベントでの基調講演は2時間半、一般セッションは60分から90分。これに対しオンラインは20~25分かそれ以下に絞った。Adobe Corporate Events担当Senior DirectorのJulie Martin氏は「オンラインは注意力を持続できる時間が短く集中しづらい。オンラインの一般的なビデオ視聴時間が8~10分というデータを参考に短縮を決め、関係者を説得した」と振り返る。

 同社の機械学習を用いたリコメンドエンジンを利用し、視聴者ごとに興味がありそうなセッションをページに示した。マーティン氏は「動画へのエンゲージメント度合いでコンテンツをリコメンドしたが、電子メールなどでのプロモーション施策がセッションを視聴する登録者の獲得につながった」と話す。