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 「社員にとってもサプライズだった」――。米Meta Platforms(メタプラットフォームズ、以下メタ)のある社員は驚きを隠さない。同社がVR(Virtual Reality)ヘッドセット主力製品をいきなり値上げしたからだ。背景には、思い描いていたシナリオ通りにメタバース関連事業を展開できない焦りがある。

 メタは2022年8月、VRヘッドセット「Meta Quest 2(旧Oculus Quest 2)」の価格を改定した。新価格は、ストレージ容量が128Gバイトの機種が399.99米ドル、同256Gバイトの機種が499.99米ドルと、いずれも以前に比べて100米ドルほど値上げした。

「Meta Quest 2(旧Oculus Quest 2)」
「Meta Quest 2(旧Oculus Quest 2)」
(出所:メタ)
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 Quest 2は高性能な割に価格が安いことから人気を博し、販売台数を伸ばしていった。香港に本社を置く調査会社Counterpoint Technology Market Researchの調べによれば、2021年末時点の累計出荷台数は1000万台を超えており、VRヘッドセットの中で最大の売れ行きを誇る。そんな最大の武器を捨てる今回の値上げに、メタ社内からは驚きの声が上がる。そもそもQuest 2の発売は2020年10月。VRヘッドセットのようなデジタル家電の場合、同じ製品であれば発売から時間が経過するほど価格が安くなるのが一般的だ。それだけに、発売から2年近く経過した製品を値上げするのは異例といえる。

 メタは値上げの理由として、製造コストや出荷コストの高騰を挙げている。ところが、あるサプライヤーは、「我々は部品の価格を上げていない」と首をかしげる。もちろん、人件費や輸送費などは上昇しているため、値上げの理由の1つにはなるだろう。だが、本当の理由は別にあるとみられる。