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 パソコン(PC)向けゲーム配信基盤で人気の「Steam」を運営する米Valve(バルブ)のゲーム機「Steam Deck」がついに日本に上陸する。携帯型ながらも「PlayStation(PS)5」といった据え置き型ゲーム機と同じアーキテクチャーを採用したプロセッサーを搭載し、これまで高価なハードウエアが必要だったPCゲームを手軽にプレーできるようにした。先行して販売を始めた米国ではヒットを飛ばし、品薄状態にある。果たしてSteam Deckは、「Nintendo Switch」が市場を独占する、携帯型ゲーム機に旋風を巻き起こすか。

Steam Deckをプレーしているところ
Steam Deckをプレーしているところ
(出所:Valve)
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 もともとバルブは、ゲーム開発会社として1996年にスタートした後、2003年からSteamを始めた。それからユーザー数を増やしていき、2022年8月時点で、月間アクティブユーザー数は1億3000万人を超えた。約250の地域から常時、最大2700万人がSteam上でゲームをプレーしているという。米Sony Interactive Entertainment(SIE、ソニー・インタラクティブエンタテインメント)のネットワークサービス「PlayStation Network(PSN)」の月間アクティブユーザー数が1億200万(2022年6月末時点)であることを考えると、Steamの人気ぶりがうかがえる。

 バルブは、PCゲームユーザーの拡大に向けてハードウエア開発にも力を注いできた。米シアトルに隣接するベルビューのバルブ本社には、Steam Deckの試作品がずらりと並び、同社のハード開発に対する並々ならぬ意欲を感じる。これまで、Steam向けゲームコントローラーやLinuxベースの「SteamOS」を採用したゲーミングPC「Steam Machine」、VR(仮想現実)ヘッドセット「Valve Index」などを手がけてきた。

バルブ本社の一室に並ぶSteam Deckの試作品
バルブ本社の一室に並ぶSteam Deckの試作品
(出所:日経クロステック)
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VRヘッドセットの試作品も並ぶ
VRヘッドセットの試作品も並ぶ
(出所:日経クロステック)
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 ハードウエアを開発するごとに、そのノウハウを獲得してきたバルブの最新ハードウエアがSteam Deckである。PCゲームに興味はあるものの、ゲーミングPCの用意などに対して敷居が高いと感じていた人々が手に取りやすい機器を目指した。どこでもPCゲームをプレーできるように携帯型を選択し、かつ価格を399米ドルからとゲーミングPCに比べて抑えた。

 こうした特長が受け入れられ、2022年2月から欧米で販売を始めると瞬く間に人気となった。加えて、半導体不足などのサプライチェーンの問題もあり、品薄状態が続く。その後、同問題が解消されつつあると発表し、同年8月から日本の他、韓国や台湾、香港といったアジア向けの予約を始めた。まず日本から2022年内に出荷を目指す。日本市場を先行させるのは、アジア地域の中で「PCゲームのファンが多いため」(Steam Deckの開発に携わったデザイナーのLawrence Yang氏)だ。日本を含めたアジア地域のゲームファンに向けてSteam Deckをアピールするために、同年9月に開催予定の「東京ゲームショウ 2022」に出展して実機体験を可能にする予定である。

 Steam Deckは携帯型ながらも、「Nintendo Switchはライバルではなく、まったく別のデバイスで、あくまでPC」(Yang氏)と位置付ける。実際、今後発売予定のドッキングステーションを通じてディスプレーやキーボードなどと接続すれば、デスクトップパソコンのように利用できる。OSにWindowsもインストールできるという。ユーザーが本体を分解し、部品の交換も可能だ。交換パーツや修理ガイドをiFixitのWebサイトで公開している。

ドッキングステーションと接続して、デスクトップパソコンのように利用できる
ドッキングステーションと接続して、デスクトップパソコンのように利用できる
(出所:日経クロステック)
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 そんなSteam Deckはどのように開発されたか。バルブ本社で技術者に話を聞くと、設計で配慮した点として、性能と消費電力のバランス、熱設計、コントローラー部の握り具合など多岐にわたったという。加えて、開発期間中に新型コロナウイルスによるパンデミックが直撃。新型コロナ禍対策に腐心した。

取材の応じたデザイナーのLawrence Yang氏(左)と、技術者のPierre-Loup Griffais氏(右)
取材の応じたデザイナーのLawrence Yang氏(左)と、技術者のPierre-Loup Griffais氏(右)
(出所:日経クロステック)
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