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 米Apple(アップル)が2020年10月から順次発売する「iPhone 12」シリーズ4機種の中で、カメラ機能を特に強化したのが「iPhone 12 Pro Max」である。オンライン発表会では、暗所でのポートレート撮影や、映画のような動画作品を撮影できる点など、企業向けに活用できることを強調。一眼レフやミラーレス機といったレンズ交換式デジタルカメラ(デジカメ)と遜色ない撮影機能をiPhone 12 Pro Maxに搭載したことをアピールした。スマホのカメラ性能が向上したことで、「カメラはスマホで十分」という消費者が増え、小型のデジカメ市場は急速に縮小している。その波が、いよいよレンズ交換式カメラにまで押し寄せている。iPhone 12 Pro Maxは、そんな状況を象徴するスマホといえる。

左が「iPhone 12 Pro Max」、右が「iPhone 12 Pro」
左が「iPhone 12 Pro Max」、右が「iPhone 12 Pro」
(出所:Apple)
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 小型デジカメがスマホにユーザーを奪われる中、カメラ市場の防波堤として期待されているのがレンズ交換式のデジカメだ。レンズ一体型の小型デジカメよりも高価で、かつレンズの売り上げも期待できる。とりわけミラーレス機は、レンズ交換式の中では価格が手ごろで、かつ小型・軽量ということから、カメラ本体やレンズに何十万円を投じるような愛好家以外にも広がった。その結果、デジカメ市場全体が縮小する中で、ミラーレス市場は伸びている。ミラーレス機のイメージセンサーやレンズは、スマホ搭載のものに比べて大きく、光学的に優れている。スマホのカメラ機能が高度化しても、市場はすみ分けられると思われていた。

 ところが、その状況が変わりつつある。画像処理を担う半導体とソフトウエアが進化し、これらを組み合わせることでミラーレス機とスマホの差が縮まってきたからだ。「コンピュテーショナルフォトグラフィー」と呼ばれるデジタル処理である。中でも、深層学習のような機械学習の技術が進展し、スマホのプロセッサーICに深層学習の推論処理用回路が集積されたことで、その状況に拍車をかけた。

 明るい場所から暗い場所までのポートレート撮影はもちろん、夜景や星空の撮影、暗所から明所までのダイナミックレンジが広い場面の撮影まで、これまでミラーレス機が得意としてきた撮影をスマホで実現できるようになった。