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 スモールビジネス事業者(個人事業者や中小事業者)を対象に、通称で「アップル税」と呼ばれる配信手数料を軽減する。米Apple(アップル)は2020年11月18日、20年のアプリ販売額が100万米ドル以下のアプリ開発者に対して、21年1月から有料アプリの配信手数料を従来の30%から15%にすると明らかにした。これからアプリの配布を計画している新規開発者も軽減対象である。スモールビジネス事業者を対象にした取り組みを「App Store Small Business Program」と呼ぶ。詳細を20年12月初旬に明らかにするという。

「App Store Small Business Program」に期待を寄せる開発者のイメージ
「App Store Small Business Program」に期待を寄せる開発者のイメージ
(出所:Apple)
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 Appleは、配信手数料の引き下げに踏み切った主な理由として、新型コロナウイルス禍を機に、経営悪化に苦しんだり、新たにデジタル事業を始めたりするスモールビジネス事業者を支援するためとしている。同種の理由で、米国の大手IT企業は、スモールビジネス事業者に対する配信手数料を期間限定で無料化したり、減率を実施したりしている。こうした目的に加えて、Appleを含めた米大手ITが配信手数料の引き下げに踏み切るのは、アプリ開発者や米議会などが出ている、「独占的かつ高額」との批判をかわす狙いがあるとされる。

 中でも、アプリ配信に関してAppleはやり玉に挙がっている。契機は「フォートナイトの乱」だ。20年8月、人気アクションゲーム「Fortnite(フォートナイト)」を手掛ける米Epic Games(エピックゲームズ)が、配信手数料を回避する独自課金システムを導入したことを機に、Appleは規約違反として同社のアプリストアで配信を停止。それを不服としてAppleとの係争に突入した。その後、配信手数料などAppleのアプリストアの運営に不満を持つ音楽配信のスウェーデンSpotify Technology(スポティファイ・テクノロジー)など複数の企業とタッグを組み、NPO「Coalition for App Fairness(CNF)」を同年9月に立ち上げた。Appleと真っ向から対立する格好だ。

 今回、配信手数料の減率措置を講じたものの、対象はスモールビジネス事業者なだけに、Appleに対して表立って異議を申し立てている大手からは依然として不満がくすぶる。それでも、今回の減率措置で、批判の拡大を抑える効果を期待できるだろう。特に、「大手が有利な立場をたてに、個人や中小の企業を不利な立場に追い込んでいる」といった類(たぐい)の批判は出にくくなる。

 しかも、今回の減率措置を講じても、Appleのサービス事業に与えるマイナス要因は少ないとみられる。それは、アプリストアの多くの売り上げを有力企業のアプリが占めるからだ。米国の調査会社Sensor Towerが19年11月に発表した調べによると、2019年7~9月期にAppleの「App Store」と米Google(グーグル)の「Google Play」を通じたアプリ配信で生じた収益の93%はトップ1%(約1500)のパブリッシャーが生み出したものという。App Storeでのこうした比率は不明だが、同様の傾向だと考えられる。

 むしろ今回の減率措置は、アプリ配信をはじめとする、近年Appleが注力しているサービス事業の強化につながる。つまり、前出の批判をかわしつつ、今後の事業強化という「一石二鳥」になり得る。それは、今回の減税措置により、個人開発者や中小規模の開発者をさらに呼び込みやすくなるからだ。Appleは、今まさに開発者を強く求めている時期である。理由は大きく2つ挙げられる。