全2138文字

 「これほどの高性能なパソコンをこの価格で入手できるのはすごいこと」――。著名なソフトウエア技術者である中島聡氏は、米Apple(アップル)の独自プロセッサー「M1」を搭載した新しいMacをこう絶賛する。同社は20年11月10日にM1を搭載した新しい「MacBook Air」と13型「MacBook Pro」「Mac mini」を発表。それぞれ999米ドルから、1299米ドルから、699米ドルからと、前モデルと同額あるいは下回る価格にした。このうち999米ドルのM1搭載MacBook Airは「おおまかに肌感覚で言うと、私が所有している3000米ドル前後で購入したIntel製プロセッサー搭載Macと同程度の処理速度」(中島氏)。

 こうした評価は、中島氏に限ったことではない。M1搭載Macを入手したユーザーの多くが、「サクサクと動作するのに価格は手ごろでコストパフォーマンスが高い」という感想をWebサイトやSNSに投稿している。実際、著名なベンチマークソフトGeekbench 5のスコアは、M1搭載の3機種ともシングルコアで1700前後と、従来のMacに比べて高い値を達成している。

ベンチマーク結果を掲載したWebサイト:Mac Benchmarks

「M1」を搭載した「MacBook Air」と13型「MacBook Pro」「Mac mini」
「M1」を搭載した「MacBook Air」と13型「MacBook Pro」「Mac mini」
(出所:Apple)
[画像のクリックで拡大表示]

 M1が高速な一因は、DRAMを混載し、「UMA(Unified Memory Architecture)を採用したことにある」(中島氏)。CPUやGPUなどで共有して利用することで、メモリーアクセス時のオーバーヘッドを削減できる。iPhoneやiPad向けのAシリーズプロセッサーと同様だ。ただし、M1の方がメモリーの容量が多い。M1のベースになったとされる同シリーズの最新版「A14 Bionic」では、メモリー容量は6Gバイトとみられる。一方で、M1は標準で8Gバイト、オプションで16Gバイトまで選択できる。

M1はDRAMを同一パッケージに混載する
M1はDRAMを同一パッケージに混載する
(出所:Apple)
[画像のクリックで拡大表示]

 深層学習の推論処理などに向けた「Neural Engine」のM1のコア数は16と、A14と同じだが、CPUコアやGPUコアを強化した。M1のCPUコア数は8で、このうち4つが電力効率重視、4つが性能重視である。A14のCPUコア数は6。このうち4つが電力効率重視、2つが性能重視だった。つまり、性能重視のCPUコアを2倍にした。GPUコアの数も同様に、M1は8つとA14の2倍である。この結果、M1とA14は同じ台湾TSMCの5nm世代の製造プロセスで作製されているものの、トランジスタ数が異なる。M1は160億個で、A14の118億個に比べて約35.6%多い。

 高性能なM1だが、消費者だけでなく、アプリ開発者も強い関心を寄せている。大きく2点がアプリ開発者を引き付けている。