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 英仏が開発した超音速旅客機(SST)「コンコルド」の引退からおよそ17年。今、再び超音速旅客機が離陸する日が近づいている。取り組む企業の中で先行するのが、2014年創業の米国の新興企業であるBoom Technology(ブーム・テクノロジー)注1)。創業から約6年、1人乗りの小型試験機「XB-1」を20年10月にロールアウト(工場から機体を搬出して公開)した。21年に超音速での飛行試験を始める。並行して商用機の開発にも着手し、XB-1の試験結果を踏まえ、23年の製造開始、25年のロールアウトを目指す。その後、「型式証明」を取得し、29年に乗客を乗せてフライトする目標を掲げる。

注1)プレスリリースなどではBoom Supersonic(ブーム・スーパーソニック)と表記されている。
Boomの実証試験用の小型超音速機「XB-1」 
Boomの実証試験用の小型超音速機「XB-1」 
機体のそばにいるのが同社CEOのScholl氏(出所:20年10月のオンライン発表会の動画をキャプチャーしたもの)
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 コンコルドは一般的なジェット旅客機に比べて移動時間が半分ほどで済むものの、燃費が悪く、騒音が大きいことなどから、需要が伸びず引退を余儀なくされた。だが、Boomは先端技術を駆使することで、低燃費や騒音抑制を狙う。例えば、コンコルドでは機体にアルミニウム(Al)合金を使用していたが、Boomは主に炭素繊維複合材料(CFRP)を用いる。CFRPはAl合金に比べて軽量で、形状自由度が高く、高効率な機体形状を実現しやすい。すなわち燃費向上につながる。耐熱性も高く、超音速機にうってつけだ。商用機では代替燃料を利用して、「カーボンニュートラル(炭素中立)」での飛行を目指すという。高い燃費と合わせて、「超音速機は環境負荷が大きい」というイメージの払しょくを狙う。

米国のThe Museum of Flightに展示されていたコンコルド。2018年撮影
米国のThe Museum of Flightに展示されていたコンコルド。2018年撮影
(撮影:日経クロステック)
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 さらに、燃費向上などにより、コンコルドに比べてチケット代を安価にする。コンコルドでは国際線のファーストクラス並み、あるいはそれを超えるチケット代とされたが、Boomの超音速旅客機では最初の機体でビジネスクラス並みを目指している。狙うのは超音速機の「大衆化」だ。第2世代、第3世代と旅客機の代を重ねるごとに大型化し、チケット代を下げる。この目標達成のため、ビジネスジェット機のような数人乗りの機体は開発しない方針である。