米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)や米Walmart(ウォルマート)、セブン&アイ・ホールディングスの米子会社7-Eleven(セブンイレブン)といった米小売り大手が、「配送ロボット」と呼ばれるような配送向け自動運転車両の利用に積極的な姿勢を見せている。高度な自動運転技術を有するスタートアップ(新興)企業と運用を開始し、一部の地域では商用サービスへの適用も始めている。
自動運転技術といえば、これまで「ロボタクシー」と呼ばれるようなモビリティー(移動)サービス向けが脚光を浴びてきた。ところが規制や技術的なハードルなどから、当初期待されていたほど普及していない。代わりにけん引役として注目を集めているのが、物流分野だ。背景には、米国における物流コストの上昇や人手不足がある。かねて課題とされてきたが、コロナ禍によって電子商取引(EC)の利用が急増。それに伴い配送需要も急上昇し、深刻化した。こうした課題を解決する切り札として、小売業界が自動運転技術に強い関心を寄せている。
例えばセブンイレブンは2021年12月、自動運転技術を手掛ける米国の新興企業Nuro(ニューロ)と提携し、自動運転車による配送サービスを始めた。物流施設、あるいは店舗から自宅やオフィスにまで配送する、いわゆる「ラストワンマイル」と呼ばれるような短距離の配送である。ニューロが本社を構えるカリフォルニア(加)州マウンテンビューにおいて、セブンイレブンの配送アプリで注文した住人に対して自動運転車で商品を配送する。自動運転車による商用配送サービスは、同州初だという注1)。トヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」にセンサーなどを取り付けた自動運転車による配送から開始。その後同社独自の小型EV「R2」に切り替えて配送する予定だ。R2は運転席がない無人車両で、米自動車技術会(SAE)で定義された「レベル4」相当の自動運転機能を備える。
ニューロは配送用自動運転を手掛ける新興企業の中でも高い実績や豊富な資金を有する。調達額は約1年前の20年11月時点で、累計15億米ドルに達している。出資者の中に、トヨタ自動車グループのウーブン・プラネット・グループ(Woven Planet Group)のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)「Woven Capital」や、ソフトバンクグループのSoftbank Vision Fund(SVF)などがいることで知られる。
この豊富な資金から総額4000万米ドルを投じてネバダ州にR2を製造する工場やテストコースを設けると21年8月に発表している。拠点拡大や人員増強も加速させており、例えば、ベイエリア以外で初の技術開発拠点をカナダのトロントに設ける。トロントにいるトロントにいるAI・ロボティクス分野の人材を獲得するのが目的である。米国内では、テキサス州ヒューストンの人員を強化中。19年から20年にかけて従業員数を200%増、すなわち3倍に増やした。21年中にさらに55%増やす計画だ。
提携先の拡大にも余念がない。セブンイレブンにとどまらず、これまでドラッグストアチェーン大手の米CVS Health(CVS)や小売り大手の米Kroger(クローガー)、米Domino’s Pizza(ドミノ・ピザ)、米物流大手のFedEx(フェデックス)などと提携・協業している。