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 2015年9月の関東・東北豪雨による鬼怒川の氾濫で浸水被害を受けた住民らが、国の河川行政に不備があったとして3億3000万円の賠償を求めて国を提訴した。国家賠償法の時効となる18年9月を前に、8月7日に水戸地裁に訴状を提出した。

2015年9月10日の関東・東北豪雨で一帯が浸水した鬼怒川下流域(写真:国土交通省関東地方整備局)
2015年9月10日の関東・東北豪雨で一帯が浸水した鬼怒川下流域(写真:国土交通省関東地方整備局)
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 訴状では、茨城県常総市の若宮戸、上三坂、水海道の3地区で起こった氾濫に、河川管理者である国の責任があると指摘した。主な争点は(1)河川区域の見直しを怠り、民間事業者による砂丘林の掘削を防がなかった(2)堤防の沈下を把握していたにもかかわらず、早急に対策をしなかった(3)鬼怒川に流入する八間堀川の排水ポンプの操作を誤った――の3つ。洪水を防ぐための適切な措置を取らなかったとして、国の対応は「河川管理の一般水準および社会通念に照らして格別不合理」と訴えた。

 例えば、河川に隣接する「自然堤防」と呼ばれる砂丘林の掘削を許したのが若宮戸地区だ。14年に民間事業者がソーラーパネルを設置するために、河川区域外にあった自然堤防を延長約200mにわたって掘削。堤防高が鬼怒川の計画高水位を大きく下回った。同地区に人工の堤防の整備計画はなかったので、国土交通省関東地方整備局は民間事業者の敷地を借りて、削られた自然堤防の上に大型土のうを2段積んで対策を講じた。

 洪水時に大型土のうが崩れて浸水被害が広がったことから、原告は国の一連の対応を問題視。河川区域を見直して、民間の開発事業を阻止すべきだったと断じた。また、自然堤防が掘削された時点で、直ちに人工堤防の建設に着手する責任があったと追及した。

若宮戸地区の鬼怒川と自然堤防の位置。民間事業者がソーラーパネル設置のために河川区域外にある自然堤防を掘削した(資料:国土交通省関東地方整備局)
若宮戸地区の鬼怒川と自然堤防の位置。民間事業者がソーラーパネル設置のために河川区域外にある自然堤防を掘削した(資料:国土交通省関東地方整備局)
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