全1131文字
PR
南から見た犬塚遺跡の遠景。写真左が遺跡発見のきっかけになったJR常磐線移設の工事現場、右が日建の土砂採取現場(写真:山元町)
南から見た犬塚遺跡の遠景。写真左が遺跡発見のきっかけになったJR常磐線移設の工事現場、右が日建の土砂採取現場(写真:山元町)
[画像のクリックで拡大表示]

 宮城県山元町の犬塚遺跡で土砂を採取する建設会社が、事前の発掘調査で町から計1億円近い費用を求められたことに対し、一部の支払いを「高すぎる」として拒否している。文化財保護法は遺跡が壊れる工事などを進める民間事業者に調査費用の負担を義務付けているが、発掘調査には費用の算定基準のない業務が含まれる。

 町は7月2日、支払いを拒否する日建(滋賀県守山市)に未払い金約3500万円を請求する訴訟を仙台地裁に起こした。8月21日、町議会に提訴を報告した。

 遺跡のある場所で工事などを行う民間事業者は、遺跡を破壊したり調査が困難な状態にしたりする場合、遺跡の発掘調査を地元自治体の教育委員会などに有償で委託することを都道府県や政令市から求められる。宮城県教育委員会によると県内の場合、仙台のような都市部では民間の発掘調査会社も委託先の選択肢に含まれるが、郊外では教育委員会にほぼ限られる。

 犬塚遺跡は、東日本大震災の津波で被災したJR常磐線の内陸への移設計画をきっかけに、県教委が発掘調査に着手していた。7世紀末~8世紀初頭の製鉄炉跡や住居跡などで構成される遺跡だ。日建が土砂を採取する現場は遺跡の範囲内だったので、2014年度から山元町に発掘調査を委託した。調査面積は約1万7000m2。