熊本地震で被災した熊本県山都町の国指定重要文化財「通潤橋」の石垣が復旧工事中に大雨で一部崩落した問題で、復旧完了が2020年3月にずれ込むことが分かった。大雨前に予定していた19年3月から1年先延ばしになった。山都町の教育委員会が11月15日、学識者などでつくる検討委員会で明らかにした。
崩落したのは、同町で観測史上2番目となる1日当たり158.5mmの降雨を記録した18年5月7日。天端から2段目までの「手すり石」を積み直し、橋の上部に設置する石造りの通水管を修復して埋め戻した後だった。
上流右岸側で、修復したばかりの箇所も含めて橋の表面の石材が幅約10m、高さ約3.4mにわたって剥がれ落ちた。崩落した石材は94個で、天端から最大で7段目まで及んでいた。
原状復旧が求められる文化財の修復では、これらの石材を元の位置に正確に戻さなければならない。93個の位置は特定したが、残る1つが未確定だ。崩落後に回収した石はあと4片残っているが、1つの石材が割れたものなのか、裏込めに使用した石が含まれるのかなど、11月22日時点でまだ明らかになっていない。
崩落の拡大を防ぐための応急処置として、崩落箇所の周囲の石垣にはモルタルが吹き付けてある。今後の復旧工事でこのモルタルを剥がし、崩れた箇所の周囲の石材も外して積み直す。