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斜材が1つでも機能を失えば、自立も難しい構造

 イタリア・ジェノバのポルチェベーラ高架橋は、同国の著名な技術者、故リッカルド・モランディが設計したため「モランディ橋」とも呼ばれる。全長は約1100m。Ⅴ形橋脚で支える桁橋と、3基の主塔を有するコンクリート斜張橋から成る。崩落したのは3基のうち最も西側に位置するP9主塔とその前後の区間だ。

 最大の特徴は、落橋した斜張橋部分にある。H形の橋脚で支える桁橋と、A形の主塔と斜材から成る斜張橋を組み合わせた特殊な形式で、それらを単純桁(ゲルバー部)でつなぐことで200m超の径間長を実現した画期的な構造だった。

ポルチェベーラ高架橋の構造システム。関文夫・日本大学教授の資料を基に日経コンストラクションが作成
ポルチェベーラ高架橋の構造システム。関文夫・日本大学教授の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 しかし、当時は解析技術に限界があったため、あまり複雑な設計はできなかったようだ。複数の斜材を用いる現代の斜張橋と違い、ポルチェベーラ高架橋の斜材は2対のみ。建設時は仮設の外ケーブルで箱桁を張り出し、最後に斜材の主ケーブルを張ったようだ。この時点で桁に圧縮力が加わり橋は自立する。つまり、主ケーブルが破断して斜材が1つでも機能を失えば、自立も難しい構造だったと推測できる。

 橋を管理するアウトストラーデ・イタリアは1990年代前半に東側のP11主塔で、斜材の外周に配した新たな外ケーブルに荷重を負担させる補強を施していた。斜材とP11主塔頂部の接続部で、空洞やケーブルの腐食が見つかったからだ。

 アウトストラーデは、崩落したP9主塔と残るP10主塔でも、約2000万ユーロ(約25億円)を投じて同様の補強工事を実施する予定だった。2017年にインフラ交通省に計画を提出し、入札手続きを進める中で事故は起こった。

 事故の原因については結論が出ていない。新たな映像は、今後の議論に影響を与えそうだ。

崩落したP9主塔の詳細。取材を基に日経コンストラクションが作成
崩落したP9主塔の詳細。取材を基に日経コンストラクションが作成
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