山口県下関市で瀬戸内海に面した競艇場の護岸が沈下したのは、過去最大級の降雨に経年劣化が相まって、基礎地盤内に水みちが形成されたのが原因だと分かった。17時間にわたって続いた越流によって水たたきが破損し、水みちが拡大した。当初、護岸から5mほど離れた海側で国土交通省が進めていた捨て石の掘削が影響を与えた可能性が指摘されたが、事故との関連はないと判明した。
国交省九州地方整備局が2020年2月10日に開いた原因究明委員会(委員長:善功企・九州大学名誉教授)で明らかにした。
事故があったのは19年8月。下関市が管理する「ボートレース下関」の競走水面と瀬戸内海を仕切る延長100m程度の護岸のうち、中央付近の約30mの区間が1~2m沈み込んだ。
護岸の天端は海面の平均干潮位よりも2.9m高く、満潮時には海面よりも1mほど下に没する。建設時期は不明だが、1960年代には現在の形になっていたとみられる。コンクリートの漏水対策などの補修を何度か繰り返してきた。
委員会が示した沈下のメカニズムは次の通りだ。まず、事故の3日前から降り続いた雨で競艇場内の水位が上昇。事故前日の午後8時ごろから、護岸の内外に水位差が生じ、海側に向けて越流が始まった。
次に、事故当日の午前8時ごろから潮位が低下。護岸の内外の水位差が拡大し、午前10時半には護岸直下の砂れき層に作用し続けた浸透流で水みちが形成された。
午後1時ごろに水位差が2.63mに達し、水みちが拡大した。越流水が長時間当たって破損した水たたきの下面に、水みちを通った水流が衝突。土粒子とともに水たたきを海側へ押し流した。基礎地盤を失った護岸は崩れて沈み込んだ。