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 国土交通省は2020年3月から直轄の土木工事を対象に、動画のライブ配信を利用して現場へ行かずに段階確認などを行う「遠隔臨場」を全国で試行する。当初は20年4月以降に始める予定だったが、新型コロナウイルス対策の一環で前倒しした。

■施工者が現場で撮影する動画を監督職員はリアルタイムで見る
■施工者が現場で撮影する動画を監督職員はリアルタイムで見る
(資料:国土交通省)
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 同省は、スマートフォンなどライブ配信に使える機器の普及に伴い、監督業務への利用を検討してきた。特に交通の不便な現場が多い土木工事で導入のメリットが大きい。施工者にとっても、監督職員とスケジュールを調整しやすくなるので、業務の効率化が見込める。

 東北地方整備局が、全国に先駆けて17年度から一部の工事で遠隔臨場を試行してきた。19年度には中部地方整備局も試行。国交省は業務効率の向上が可能とみて、全国への拡大を決めた。

 同省大臣官房技術調査課が遠隔臨場の試行要領案をまとめ、20年3月2日に各地方整備局と北海道開発局、内閣府沖縄総合事務局に通知した。地方整備局などが計100件程度の現場を指定し、21年3月末までに試行する。その他、施工者が希望する現場でも試行する考えだ。遠隔臨場の対象は段階確認、材料確認、立ち会いの3つで、完成検査には用いない。

撮影箇所は発注者が指示

 試行要領案では、現場からの動画の送信について、画素数は1920×1080以上、通信速度は転送レート(VBR)が平均9Mbpsといった仕様を提示した。これらの仕様を満たすカメラなどの機器は施工者側が用意する。

 施工者が使うカメラは、ヘルメットなどに装着できるウエアラブルカメラの他、一般的なスマートフォンやタブレット端末でもよい。「画素数などの仕様を満たし、監督職員が現場を実際に見るのと同等の精度で画像を送信できれば、機種は問わない」(技術調査課の清憲三技術管理係長)

 出先事務所にいる監督職員が現場の監理技術者などに撮影箇所を指示し、施工者側の説明を聞きながら確認する。撮影箇所の選択を施工者任せにしないことで、工事の遅延や不具合などの隠蔽を防ぐという。

 原則として、現場を撮った動画の保存は求めない。ただし、建設コンサルタント会社の現場技術員が発注者支援として監督業務を代行する場合は、後で業務内容を報告するため、動画を録画して保存する。

 遠隔臨場の試行に要する動画配信の費用は、国交省が指定した工事では同省と施工者で折半して負担する。施工者がカメラなどの機器を新たに用意した場合は、その費用を折半の対象に含める。施工者の希望で試行する工事では、全額施工者が負担する。

 遠隔臨場の効果が特に期待される山間部や離島などの工事現場は、ネットワーク環境が良好でない場合もある。清係長は、「電波が届きにくい現場でも遠隔臨場ができるかどうかなどを検証し、今後の課題を明らかにしたい」と試行の意義を語る。

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