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 越水や浸食ではなく、決壊だった――。国土交通省は2020年4月10日、19年10月の台風19号(東日本台風)による河川堤防の被害判断を訂正した。

国交省が「越水」から「決壊」に被害判断を見直した都幾川の堤防。下流から6.5km地点の左岸に当たる。被災前の堤防は、写真左手前から右奥までつながっていた。写真左側が川表。埼玉県東松山市石橋で2019年10月13日に撮影(写真:日経クロステック)
国交省が「越水」から「決壊」に被害判断を見直した都幾川の堤防。下流から6.5km地点の左岸に当たる。被災前の堤防は、写真左手前から右奥までつながっていた。写真左側が川表。埼玉県東松山市石橋で2019年10月13日に撮影(写真:日経クロステック)
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 訂正したのは埼玉県東松山市を流れる荒川水系の都幾(とき)川だ。下流から6.5km地点の左岸と5.9km地点の右岸にある計2カ所の堤防を、決壊した箇所として新たに加えた。いずれも越水による裏法などの洗掘が決壊の原因とみられる。

 前者は幅約30m、後者は幅約20mにわたって盛り土した堤体が大きく流失した。ところが、国交省はこれまで被害状況をそれぞれ「越水」、「堤防浸食」と分類。都幾川の国管理区間で生じた決壊は、0.4km地点の右岸にある堤防1カ所だけだと発表していた。

国交省が被害判断を「決壊」に改めた2カ所の位置(資料:国土交通省)
国交省が被害判断を「決壊」に改めた2カ所の位置(資料:国土交通省)
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左岸6.5km地点。下流から続く堤防のうち、都幾川に流入する水路に取り付くように延びる区間の堤体が流失した(写真:国土交通省)
左岸6.5km地点。下流から続く堤防のうち、都幾川に流入する水路に取り付くように延びる区間の堤体が流失した(写真:国土交通省)
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右岸5.9km地点。県道が堤防を乗り越えて川表側を通る(写真:国土交通省)
右岸5.9km地点。県道が堤防を乗り越えて川表側を通る(写真:国土交通省)
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右岸5.9km地点の被災状況。写真右側が川表。国交省は従来、「堤防浸食」と分類していた。すぐ上流側には明治時代に建設された樋管がある(写真:国土交通省)
右岸5.9km地点の被災状況。写真右側が川表。国交省は従来、「堤防浸食」と分類していた。すぐ上流側には明治時代に建設された樋管がある(写真:国土交通省)
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 国交省によると、台風19号がもたらす大雨で都幾川の水位が計画高水位に迫った19年10月12日、同省の職員が川沿いを巡視。下流から6.5km地点の左岸が400mにわたって「越水」していると報告した。越水とは増水した川の水が堤防の天端からあふれ出す現象だ。

 この時点で堤防の一部が既に決壊していた可能性はあるものの、「当時は危なくて堤防に近づけず、十分に確認できなかった」と、国交省関東地方整備局河川部の高畑栄治河川調査官は釈明する。

 日経クロステックは翌13日午後、同地点で堤体が流失しているのを確認した。国交省も同日、被害を現地で確認したもようだが、越水区間の一部と見なして被害判断を変えなかった。

 一方、下流から5.9km地点の右岸は、現地に立ち入れるようになった13日に職員が初めて訪れ、「堤防浸食」が見られると報告した。「13日時点で川の水位は下がっており、職員は堤防から堤内地側に水が流れ込む様子を目視していない。そのため、決壊と断定できなかった」(高畑河川調査官)