東京都府中市で土木工事を巡る官製談合疑惑が持ち上がった。市幹部1人と市議2人、市内の建設会社社長3人の計6人が事件に関わったとされる。市発注工事の入札不正疑惑が発覚するのは、土木課の職員が市内の建設会社に積算価格を漏らして逮捕された1996年1月以来およそ四半世紀ぶりだ。
警視庁は2020年6月2日、府中市が19年に実施した2件の土木工事の指名競争入札で、事前に市議2人に最低制限価格を漏らしたとして、当時の都市整備部長を官製談合防止法違反容疑で逮捕した。
併せて、価格情報を受注者側に漏らした市議2人と、落札した府中植木(府中市)と池田土木(同)の2社の社長を公契約関係競売入札妨害容疑で逮捕。市議と池田土木の間で価格情報を仲介した玉川造園(同)の社長も、同容疑で逮捕した。
事件が起こったのは、府中市が19年8月28日に開札した「四谷さくら公園(2期)拡張整備工事」と、同年9月11日に開札した「浅間町1丁目地内道路新設工事」の2件の指名競争入札だ。いずれも、公募に応じた企業の中から市が参加者を指名する「公募型」を採用していた。
警視庁によると、当時の都市整備部長は2件の入札でそれぞれ別の市議に最低制限価格を漏洩。公園拡張工事では、一方の市議が入手した価格情報を府中植木の社長に直接教えた。道路新設工事では、もう一方の市議が玉川造園の社長を通じて池田土木の社長に価格情報を伝えた。
公園拡張工事の入札は、予定価格1億2425万7000円(税抜き、以下同じ)で、最低制限価格1億1220万4071円。指名された6社のうち、5社が入札に参加。市議から価格情報を得た府中植木が、最低制限価格を9円上回る1億1220万4080円で落札した。
道路新設工事の入札は、予定価格6142万9000円で、最低制限価格5454万8952円。指名された7社のうち、5社が入札に参加。玉川造園を通じて価格情報を得た池田土木が、最低制限価格と同額で落札した。