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 自治体が浸水想定区域内に居住誘導区域を設定している問題で、国土交通省は両区域の重複は避けられないとみて、堤防整備などの水害対策と土地利用などのまちづくりを一体的に進めて被害を防ぐ方針を固めた。

浸水想定区域と居住誘導区域が重なっている例。凡例は想定される浸水深(資料:国土交通省)
浸水想定区域と居住誘導区域が重なっている例。凡例は想定される浸水深(資料:国土交通省)
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 2019年10月の東日本台風(台風19号)では、浸水したエリアが居住誘導区域に設定されているケースが少なくなかった。全国でも、浸水想定区域を居住誘導区域に含めている自治体は多い。防災やまちづくりの専門家の間では、「浸水が想定されるエリアに居住を誘導するのはおかしい」との声が上がっていた。

 そこで、国交省は20年1月、都市、水管理・国土保全、住宅の3局合同で有識者会議を設置。そうした区域設定の問題も含め、水害対策とまちづくりの連携を検討してきた。6月12日に開いた第3回会合では、5月に実施した自治体への聞き取り調査の結果を公表。自治体からの意見を紹介した。

 ある自治体は、交通事業者と連携して、居住や医療、商業などの都市機能を中心部に集約する「コンパクト・プラス・ネットワーク」のまちづくりを推進。都市の成り立ち上、中心部にある鉄道駅や高次医療施設(大学病院)を3m以上の浸水想定区域に含めている。「浸水想定区域を都市機能・居住誘導区域から除外するのは厳しい」とみる。

 別の自治体は、「(浸水想定区域など)ハザードエリアに既成市街地が多く存在し、誘導区域から除外すると、まちが成立しなくなる。一方、ハザードエリアを誘導区域として公表することにも抵抗がある」と打ち明ける。

 そのため、国交省の有識者会議は、「多くの都市部が水災害ハザードエリア内にあるなか、居住や都市機能を誘導する区域から完全にハザードエリアを除外することは困難だ」と指摘。河川や下水道などの治水施設の整備と併せ、水害リスクの低い地域への居住・都市機能の誘導、地形に応じた住まい方の工夫、避難体制の構築など、水害対策とまちづくりが一体となった取り組みを推進する必要があるとの認識を示した。

 国交省は、有識者会議が20年7月初旬までにまとめる提言を受け、8月にモデル都市を複数選定。その取り組みを踏まえ、21年3月にガイドラインを作成し、自治体などに通知する。