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 清水建設は、コンクリートの最適な充填状況をパソコン上で事前に検討する3次元シミュレーションシステムを開発し、実橋梁の工事に初めて適用した。型枠内に流し込むコンクリートの挙動やバイブレーターを使った締め固め具合を評価する。配筋密度が高い橋梁でも、実験せずに最適な締め固めのタイミングや位置、コンクリートの性状を検討できる。

型枠内に流し込んだコンクリートにバイブレーターで振動を加えるシミュレーションの様子。色が青いほど粘性が低い。バイブレーターが当たっている部分が液状化して流動性が高くなっている(資料:清水建設)
型枠内に流し込んだコンクリートにバイブレーターで振動を加えるシミュレーションの様子。色が青いほど粘性が低い。バイブレーターが当たっている部分が液状化して流動性が高くなっている(資料:清水建設)
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 開発したシミュレーションシステムでは、まず型枠や鉄筋の3次元図面をシミュレーションソフトに入力する。次に、スランプ値といったコンクリートの性状や打ち込み位置、バイブレーターの挿入位置、振動時間などの条件を設定。コンクリートを打ち込み始めてから何秒後に、どの程度充填されるかを解析する。結果は3次元のアニメーションで出力できる。

 従来、配筋密度の高いコンクリート構造物を造る場合には、コンクリートの未充填や締め固め不足による施工不良を防ぐために、実物大の供試体を使った試験施工で、バイブレーターの挿入位置や振動時間を検討していた。コストや手間、人手が必要で、検討できるケース数が限られてしまう。

 シミュレーションシステムを使えばコストをかけずに多くのケースを試せるのが強みだ。試験施工と違って、1人でも実施できる。

 国土交通省東北地方整備局が発注した、東北中央自動車道の東根川橋上部工工事で、シミュレーションシステムを初めて適用した。コンクリートの部材厚が40cmと最も薄い中央付近の主桁ウエブ部をモデル化して、コンクリートの充填シミュレーションを実施した。

橋梁中央部の主桁ウエブ部を対象にシミュレーションを実施した。コンクリートの部材厚が最も薄く、鉄筋やPCケーブルを通す管が集中しており、コンクリートの充填が難しい(資料:清水建設)
橋梁中央部の主桁ウエブ部を対象にシミュレーションを実施した。コンクリートの部材厚が最も薄く、鉄筋やPCケーブルを通す管が集中しており、コンクリートの充填が難しい(資料:清水建設)
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モデル化のイメージ(資料:清水建設)
モデル化のイメージ(資料:清水建設)
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 モデル化した高さ1.2m、幅1.2m、奥行き2mのウエブ部の解析にかかる時間は、1ケース当たり3~5日程度だ。「研究開発に携わる部署だけでなく、設計業務を担当する社員にも広く使ってもらうため、標準的なパソコンでも動くシステムにした。高性能のパソコンであればもっと早く計算できる」。開発を担当した清水建設技術研究所の浦野真次主任研究員はこう話す。

 東根川橋の現場ではスランプ値が一般的な12cmのコンクリートを使うと、ウエブとフランジの接合部分にコンクリートがうまく行き渡らないことがシミュレーションの結果で分かった。そこで、より流動性の高いスランプ値15cmのコンクリートを適用した。

コンクリートを流し込み始めてから54秒後における、スランプ値12cm(左)と15cm(右)の充填具合の比較(資料:清水建設)
コンクリートを流し込み始めてから54秒後における、スランプ値12cm(左)と15cm(右)の充填具合の比較(資料:清水建設)
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 試験施工は、本施工で型枠を組んだり締め固めをしたりする作業員で実施するため、工事に近い時期に行うことが多い。シミュレーションであれば、3次元の設計図面が出来上がり次第、解析を始められる。東根川橋梁の場合は、解析結果を確認するために試験施工を実施したが充填シミュレーションから2カ月以上も後だった。「前倒して施工性を検討できる効果は大きい」と浦野主任研究員は主張する。

 東根川橋梁では、最も条件が厳しい中央付近の主桁ウエブ部での解析結果から、コンクリートの物性と打ち込み・締め固め方法の最適な組み合わせを決めて、施工計画に反映した。中央付近に限らず、他の上部工を施工する際にも、同様の締め固め方法を使っている。