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 海草や海藻など海洋生態系に取り込んだ炭素「ブルーカーボン」を定量的に評価する――。国土交通省の認可の下、国内でブルーカーボンに関する技術研究組合が初めて設立された。法人の名はジャパンブルーエコノミー(JBE)技術研究組合だ。二酸化炭素の新しい吸収源対策として確立させ、海に関わる経済活動を意味する「ブルーエコノミー」の起爆剤になるとして注目が集まる。

海草や海藻など海洋生態系が二酸化炭素を取り込むイメージ(資料:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合)
海草や海藻など海洋生態系が二酸化炭素を取り込むイメージ(資料:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合)
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 温室効果ガスの排出をゼロにするゼロエミッションや、吸収が排出を上回る「カーボンネガティブ」の世界的な関心が高まっている。米Apple(アップル)は2020年7月、自社が販売する全デバイスの気候への影響を30年までに実質ゼロにする方針を掲げた。米Microsoft(マイクロソフト)は20年1月、30年までにカーボンネガティブを達成すると宣言した。

 「ゼロエミッションやカーボンネガティブは排出量取引だけでは達成できない。吸収源の活動が重要だ。今はまだ引き合いが少ないかもしれないが、海の吸収源対策は2030年に向けて必ずブームがやって来る」。20年7月31日に開いた技術研究組合設立についての記者会見で、JBEの理事長である海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所の桑江朝比呂沿岸環境研究グループ長は、こう話した。

「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合」は2020年7月14日に国土交通省の認可を受けて、翌日に設立した。写真は7月31日の記者会見で話す桑江朝比呂理事長(写真:日経クロステック)
「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合」は2020年7月14日に国土交通省の認可を受けて、翌日に設立した。写真は7月31日の記者会見で話す桑江朝比呂理事長(写真:日経クロステック)
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 吸収源対策では、陸域における森林などが光合成を通じて二酸化炭素を吸収する「グリーンカーボン」が有名だ。一方、海域のブルーカーボンも大きな吸収源の可能性を秘めているとして前から注目を集めていた。特に四方が海に囲まれた日本にとって、豊富な海洋資源を持続可能な形で利用すれば、経済の活性化にもつながる。そのために吸収源としてのポテンシャルを正確に測る必要があった。

 JBEが取り組む切り口の1つが、ブルーカーボンなど環境価値の定量評価だ。ブルーカーボンの二酸化炭素吸収はもちろんのこと、水質浄化や食料生産、レジャーの場、憩いの場など様々な機能を含めた価値の算出法を確立し、クレジット化することを目指す。

 例えば、桑江理事長や国土技術政策総合研究所などの研究によると、東京湾の干潟の経済価値は1ヘクタール当たり12億~18億円あることが分かっている。これまで考えられていた価値の5倍に相当する。

東京湾にある「潮彩の渚(なぎさ)」。横浜港湾空港技術調査事務所構内に、階段状の被覆形式で砂泥タイプの生物共生型護岸を整備した(写真・資料:国土交通省港湾局、関東地方整備局)
東京湾にある「潮彩の渚(なぎさ)」。横浜港湾空港技術調査事務所構内に、階段状の被覆形式で砂泥タイプの生物共生型護岸を整備した(写真・資料:国土交通省港湾局、関東地方整備局)
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 「既に横浜市でブルーカーボンのオフセットがスタートしている。全国統一版のJBEのクレジットの認証制度を早く作り、市場拡大を狙いたい」。桑江理事長はこう意気込む。