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熊本県の球磨川水系では上流での川辺川ダムの建設計画を中止してから11年にわたり、ダムによらない水防災事業を進めてきた。中流域の人吉市から下流部は山間狭窄(きょうさく)部が続く地形で、築堤や宅地かさ上げなど実施できる事業メニューは限られる。「令和2年(2020年)7月豪雨」で、実際に水防災事業が機能したのか否かを確かめるため、7月21日に現地を訪れた。
取材では、被害報道が多かった下流域の八代市坂本町坂本地区や中流域の人吉市、球磨村ではなく、それらの間にある坂本町の“報道空白地”に焦点を絞った。坂本地区にあるJR肥薩線の坂本駅の手前から球磨川沿いを走る国道219号の左岸を、徒歩で上がっていった。
八代市坂本町を走る国道219号。車道が大きく崩落している。2020年7月21日に左岸から撮影(写真:日経クロステック)
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JR八代駅からタクシーで大きく迂回し球磨川本流へ向かった。到着後は、徒歩で上流に向かった。国土交通省の「統合災害情報システム」のデータに日経クロステックが加筆
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初めに訪れた坂本町荒瀬地区では、被災直後に散乱していたであろう泥や流木が、道路から撤去されていた。一方で、泥水に漬かった家財などは道路の端に高く積まれている。数台の重機がそれらを運んでいた。
さらに歩を進めると、18年に撤去工事が完了した荒瀬ダム跡地周辺に着いた。ダムの撤去に伴い、川底に降りることができるスロープが整備されるなど、川に向かって開けていた。
八代市坂本町荒瀬地区に位置し、国道219号沿いの左岸側にある建物。壁の損傷から、2階部分まで浸水したと推測する。2020年7月21日に撮影(写真:日経クロステック)
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荒瀬ダム跡地の周辺は、堤防が低く開放的な景色が広がる。ガードレールには流木が絡まる。2020年7月21日に左岸から撮影(写真:日経クロステック)
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葉木橋付近から上流に向かう道なりに住宅はほとんど見当たらない。周辺の道路には、氾濫の影響で激しく損傷した跡が随所に見られた。路肩が削られ、崩落が車道部まで到達している箇所も多かった。
豪雨により多くの橋が被害を受けたなか、葉木橋は流失を免れた。2020年7月21日に左岸から撮影(写真:日経クロステック)
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葉木橋より上流を走る国道219号。本来は片側1車線の2車線道路だったが、路肩の崩落によって1車線しか通れなくなった。2020年7月21日に左岸から撮影(写真:日経クロステック)
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河岸浸食の激しい国道219号。2020年7月21日に左岸から撮影(写真:日経クロステック)
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