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 東京都青梅市が発注した道路工事を巡って、地元の青梅建設業協会の会長を務めていた酒井組(同市)の元社長が談合罪に問われた事件で、二審の東京高裁は2020年9月16日、一審の東京地裁立川支部の無罪判決を破棄し、元社長に罰金100万円の有罪判決を言い渡した。

 元社長は、青梅市が17年4月に実施した「幹32号線改修工事(擁壁設置その2工事)」の指名競争入札で、指名された他社の社長ら5人と面会または電話で話をして、自社が落札できるように入札を妨害した罪に問われていた。

問題の工事現場の様子(左)。都立高校の敷地が隣接し、向かい側では都の保健所の新築工事(右)が行われていた(写真:酒井組)
問題の工事現場の様子(左)。都立高校の敷地が隣接し、向かい側では都の保健所の新築工事(右)が行われていた(写真:酒井組)
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 施工現場はカーブのある急坂で、隣地には都立高校が建つ。向かい側では都の保健所の新築工事が行われているなど、施工条件は厳しい。高校や保健所との調整も必要だった。元社長は裁判で、「工事を受注したくなかったが、入札が不調になると市に迷惑がかかるので、地元建設業協会の会長としての責任感から入札した」などと供述。無罪を主張した。

 一審の東京地裁は、元社長の主張をほぼ全面的に認めた。「工事を積極的に受注する意思を有していたとはいえないから、もともと低い価格で入札することは考えておらず、他社の動向を確認することで高い価格での入札ができたわけでもない」と指摘。「公正な価格を害する目的があったとは認められない」と判断し、元社長を無罪とした。

 しかし二審の東京高裁は、「公正な価格を害する目的が認められるのに、その目的を認定できないとして、無罪とした原判決には明らかな事実の誤認がある」と指摘。「工事の採算性、酒井組の財務状況などに照らした工事受注の意味合い、関係者5人への言動に関する認定・評価、これらの総合評価を的確に行っておらず、論理則・経験則などに照らして不合理で、是認することができない」と断じた。

 工事の採算性については、酒井組の工事部長が作成した工事費積算内訳書で現場管理費と一般管理費の合計が落札額の30.8%となっている点に着目。会社が目標とする30%以上の工事粗利益の確保は可能で、元社長は採算を見込めると認識していたと判断した。

 また、酒井組は年間売上高の目標を3億~3億5000万円と設定しており、今回の工事を受注できれば目標の3分の1程度の売り上げを計上できると指摘。元社長は当時、会社の17年5月期決算が赤字になる見通しだと認識していたので、工事を受注する意味は大きかったと断じた。

 関係者5人に対する元社長の言動では、「他の皆さんがよければ、うちにやらせてもらいたいんだけど」「その2工事について、うちで行きたいんだけど」「32号行きたいんだよ。よろしく頼む」「あれ頼むな」といった発言を引用。元社長の積極的な受注意思を表すと評した。