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 東京都日野市が市内の公園などに設けたごみ収集車専用道路は都市計画法違反だとして、東京地裁は2020年11月12日、整備費の約2億5000万円を全額、大坪冬彦市長に請求するよう市に命じる判決を言い渡した。市は同月26日に控訴した。

日野市が北川原公園の北側区域内に設けたごみ収集車専用道路。道路法上の位置付けがない土木施設だ。近くにあるごみ処理施設「日野市クリーンセンター」は近隣の国分寺市と小金井市も使用しているため、ごみ収集車が専用道路を走る頻度は平日の日中で1分間当たり0.6台と高い(写真:日経クロステック)
日野市が北川原公園の北側区域内に設けたごみ収集車専用道路。道路法上の位置付けがない土木施設だ。近くにあるごみ処理施設「日野市クリーンセンター」は近隣の国分寺市と小金井市も使用しているため、ごみ収集車が専用道路を走る頻度は平日の日中で1分間当たり0.6台と高い(写真:日経クロステック)
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 日野市は都の下水処理施設「浅川水再生センター」の周辺や屋上に9.6haの北川原公園の整備を計画。そのうち5.3haの整備を終えて供用している。水再生センターの付近にあるごみ処理施設「日野市クリーンセンター」に出入りするごみ収集車のため、公園整備に関する都市計画に含まれない延長約450mの専用道路を公園内や公園予定地内に設けた。この措置が違法であるとして住民が17年に市を提訴し、専用道路の整備費を大坪市長に負担させるよう求めていた。

北川原公園に掲示されている園内の案内図。中心を貫く国道20号日野バイパスに沿ってごみ収集車の専用道路が設けられている。専用道路の実施設計はエイト日本技術開発が担当した(写真:日経クロステック)
北川原公園に掲示されている園内の案内図。中心を貫く国道20号日野バイパスに沿ってごみ収集車の専用道路が設けられている。専用道路の実施設計はエイト日本技術開発が担当した(写真:日経クロステック)
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 北川原公園と予定地は国道20号日野バイパスで南北に分断されている。市は、日野バイパスに沿った北側区域と、南側の公園予定地である北川原広場、および日野バイパスの高架下に、片側1車線のごみ収集車専用道路を設けている。北側区域内の道路は都市公園の兼用工作物、広場内の道路は広場管理用の道路、高架下は公園の区域外の市道という名目で設けた。

 市は、ごみ収集車専用道路を公園の一部や公園の敷地外の施設と位置付け、期間をおおむね30年間に限定して暫定的に設置することなどを理由に、都市計画変更の手続きは不要とした。設置期間はクリーンセンターの焼却炉の耐用年数に合わせた。市は住民説明会を開き、専用道路の整備に関して「最終的には大方の賛成を得た」(緑と清流課)と認識しているという。19年12月、クリーンセンターの試運転とともに、専用道路の供用を開始した。

 市区町村の都市計画変更の手続きは決定時と同様に、住民が参加する公聴会、都道府県との協議、変更案の公告と縦覧、都市計画審議会での審議といったプロセスを要する。原告の1人の木村真実弁護士は、「ごみ処理施設の供用開始が迫る中で、市は住民の強い反対が予想されて手間取りそうな変更手続きを避けたかったのではないか」とみている。

 原告側はごみ収集車専用道路の違法性を指摘するとともに、どうしても公園や公園予定地内に設けるのであれば地下に設けるべきだと主張した。